税理士の独立開業は勤務と比べてオススメ?独立成功者の特徴も解説!

「税理士の資格を取る以上、独立して自分の会計事務所を開業したい!」

こう考える人は多いと思います。

独立は勤務とは異なり、業務から収入まで自分で全て決められるので、とてもやりがいがあるのは確かです。

とても魅力的ではあるのですが、
他方で、そうした独立開業のハードルは昔に比べ高くなってきています。

せっかく事務所を構えたのに、開店休業や廃業も少なくありません。

そこでこの記事では、税理士の独立開業について解説していきます。
特に記事の冒頭では、事務所勤務との比較もしてみましたので参考にしてみてください。

この記事の執筆者

・実務経験、通算20年以上
・独立までに大・中・小の3つの事務所に勤務(他に特許事務所経験あり)
・資格:税理士・公認会計士・弁理士
・独立後は会計・特許事務所を運営

目次

税理士の独立開業を事務所勤務と比較してみる

まず先に、独立開業と事務所勤務を比較してみます(5段階評価で、数字が大きくなるほど度合が高くなります)。
独立開業は新規開業を、勤務は一般的な会計事務所勤務を念頭にしています。

なお、評価は筆者の経験に基づく主観的かつ相対的なものであることをご了承ください。

独立開業事務所勤務
収入の高さ2~33
自由度52
安定性2~34

収入面について

独立組の年収は高額なのでは、考える人も多いでしょう。
確かに一つのデータとして平均年収740万円余りという数字がでています(「第6回税理士実態調査報告書」の「開業税理士」の項目参照)。

ただし、年収は税理士各人によって開きがあり、特に稼いでいる(一部の?)先生方が、その平均値を引き上げている点に注意が必要です。

今後、新規に独立される方の年収は、500万円程度と考えた方がよいかもしれません(「同報告書」の分布によれば中央値はほぼこのぐらい)。

これに対して、事務所勤務はについては600万円弱というデータが示されています(「同報告書」の「補助税理士」の項目参照)。
また、年収の分布にそれほど大きな差異は見えません。

報酬単価の厳しい現状や、担当できる顧問先数まで考慮すると、一般的な税務では年収はやがて頭打ちなってきます。

そこで、年収を大幅に挙げるには、高度な専門性を身につけたり、さらには特殊分野を通じて差別化していくことが求められます。

ひとつの結論として、1,000万円を超える高額の年収を望むのであれば、(ゼロから独立開業するよりも)大手税理士法人(BIG4など)でパートナーを目指すのが近道と言えます(ただしパートナーになれるのはわずか数パーセントであるうえ、メチャクチャ激務です)。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

自由度について

これについては明白ですね。
独立開業がダントツ一番です。
特に顧客に対する報酬対価と仕事の時間を自由に決められるメリットは大きと言えるでしょう。
もちろん独立に年齢的な制約などありません。

逆に言えば、上手くいかなくても全て自己責任ということになります。

ただし近年は、勤務であっても多様な働き方が積極的に取り入れられており、例えばフレックスタイム制や在宅勤務を認める職場も増えてきています。

安定性について

新規独立を念頭にすれば、今日では勤務の方が安定していると言えるでしょう。

とにかく今日では顧客の獲得が難しく、事務所を軌道に乗せるのが困難になっています。

この点、事務所勤務は基本的に問題なし。
見方によっては、自由度や昇給度合の見返り・バランスともいえるでしょう。

ただし、独立を一律に否定するつもりはありません。
税理士は士業の中でもハードルは(相対的ですが)低いです。

おカネや税金はどんな企業・個人でも関係していきますし、人々の関心は絶えません。
最悪でも、かき集めれば(とりあえずは)何とかなり得る、というのが筆者の実感です(ただし、資格と一定の経験があることが前提)。

開業コストも昔に比べ、それほどかからなくなってきています(PC、電話兼複合機、会計・税務ソフトがあれば基本OK)。

今後は、税理士での独立開業はやめた方がよいのか

先ほど、開業税理士の年収に触れましたが、実は、この開業税理士には、いわゆる経費枠があります。

事業をしていればわかりますが、とにかく合法の範囲内であらゆる手段で節税に励むものです。
この点は税理士といえども変わりません。

結局、開業した場合は、事務所売上(年商)からこの経費分を除いた分が年収です。

例えば、自宅開業している場合、固定資産税や電気代(貸家なら家賃等)、車両関係について、相当の部分を経費にするのが通常です(細かく集計せず、ザックリと半分以上、経費に落としていることも多い)。
奥様を青色専従者扱いにしている開業税理士も少なくないでしょう。

最終的には、各人の仕事観・価値観、そして力量によるのですが、
ワークライフバランスなども含めて、自分の裁量で全て決定できるのは、十分魅力的と言えるでしょう。

これに対して、勤務で年収1千万円以上となると、激務も極まってくる一方、手取りはというと(年収が増えるにつれて)7割、3分の2、6割、…自由業のイメージも全くありません。
命を削るおもいで働いているのに何なんだ!との思いがある人もいるではないでしょうか。

そこで、これも一つの選択肢ですが、

<一人事務所>
事務所売上1,000万円

自由かつ、そこそこ安定

皆様はどのようにお考えになりますか?

独立開業を成功させている税理士の特徴3つ

ここでは、筆者の経験を踏まえつつ、独立開業に成功している税理士の特徴をいくつか挙げてみたいと思います。

  • 自宅開業しない
  • 若い頃からキャリア設計している
  • 高い専門性や得意分野などで差別化をはかっている

自宅開業しない

開業当初は顧客もそれほどなく(ゼロからスタートもある)、自宅で事務所を始めるのが今日では一般的です。

他方、自宅開業しない人は、(顧客数に関わらず)開業当初からテナントを借りるほか、従業員スタッフを雇うこともあります。

税理士事務所での経験が豊富なうえ、当然ながら、開業に対する覚悟が(自宅開業する人に比べ)違っています。

実際、自宅開業に消極的(批判的?)な税理士は少なくありません。
自分の後輩が「自宅で事務所を始めたい」と言ったら、厳しくたしなめていたのを聞いたことがあります。

若い頃からキャリア設計している

ただ漠然と事務所に勤務し「先々は独立したい」と言っている人と、戦略的にキャリア設計をしている人との違いは、特に独立後に顕著に現れます。

後者の人は、専門実務から営業手法まで、様々なことを頭に置きながら日々の仕事や転職活動をしているのです(後述)。

(少数派ですが)20代から積極的にこうした取り組みをしている方は、30代には都心の一等地に自分のオフィスを構えています。

高い専門性や得意分野などで差別化をはかっている

従来型の業務(記帳代行と決算申告業務)だけでは、事務所の収益性は上がりづらくなってきています。
AIの進展・拡充などにより、今後はさらに厳しくなるでしょう。

そんな中で、得意分野や専門分野を備えておくことは、事務所成功の必須要素となりつつあります。
もちろん顧客獲得(営業)にも有利です。
○○についてはオレが業界一番、オレに任せろ!」ぐらいのところに仕事はバンバンくるものです。

具体例としては、資産税分野、IT分野、医療専門など。
なにも税務分野にこだわる必要はありません。各業種・業界を通じて差別化できれば理想的です。
ちなみに筆者は知財分野(弁理士業)と組み合わせてオリジナル性を発揮してきました。

独立を成功させる対策①:顧客・仕事の開拓について

さてここからは、稼げる独立開業(攻めの独立開業)について述べていきたいと思います。

まず、事務所を軌道に乗せるには顧客の開拓が欠かせません。
つまり営業です。

ですが士業の皆さんはココで頭を抱えるもの。

今日では税理士も過当競争下にいます。
大昔のように単にビラ配りしたり、あちこちに顔を出して名刺を配っただけではなかなか厳しいでしょう。

やはり今日では、仕事や顧客の開拓は、自分の専門分野や得意分野(実務)とリンクして行っていくのが得策です。

少しばかりユニークな例として、今日でも話題となっているネット関連分野を取り上げてみます。

まず仮定として、自分は税務の専門家だが、ネットビジネスにも強い関心があるとします。

すると、その分野を差別化要因にすべく、関連する業務を経験したり、勉強したりすることが考えられるでしょう。

そうした中で、できれば税務とは別の世界の人たち(ここではネット業界の人たち)と交流していくのです。

この例では、税務にネットノウハウ等を加えた差別化戦略を、人脈形成と併せて展開していきます。

またネットといえば、ツイッター等のSNSです。

今日では事務所HPと併せて、有力な営業ツールとなっています。
これらを通じて、自分の得意分野をアピールするとともに、税務や会計の情報を発信していくことも効果的です。

特に税理士等の士業はITやAIの影響をもろに受けていながら、こうした分野は(高齢化もあって)手薄になりがちです。

そうしたところに、積極的に切り込んでいけば、道はいくらでも開けていくはずです。

独立を成功させる対策②:専門性とキャリア設計について

上でも述べた通り、専門性や差別化要因を備えておくことは、収益性の高い事務所運営には不可欠です。

他方、最初から自分の適性も含め先々の方向性を見極めるのは結構難しいもの。

そこで一つお勧めなのが期間を区切って業務にあたることです。

例えば「この事務所で2年間、目一杯頑張ってみて、その間に様々な方向性や可能性を探ってみる」といった具合です。

場合によっては、税理士業務そのものが向いていないかもしれません(1年もやれば分かるはずなので、もし向かないと判断したら、ダラダラ続けず方向転換しましょう)。

そのうえで、特に独立を目指すなら、自分の適性ややりたい分野を見極めながら、得意分野や差別化要因を磨いていくのです。

具体的なキャリアルートとしては、例えば次のようなものが考えられます。

  • 一般税務3年→資産税特化で2年→独立開業
  • 一般税務3年→ITコンサル2年→独立開業
  • 監査法人4年→資産税またはFASなど1~2年→独立開業

成り行きに任せた独立では、開業時点はもちろん、その後の事務所経営も厳しいものとなります。
営業から実務まで受け身の姿勢になりがちで、効率の悪い業務運営や顧客の質に悩まされたりするものです(報酬単価の低い記帳代行や雑務ばかりになりがち)。

やはり早い段階から将来どんな仕事をしたいのかを明確にしながらキャリア設計していくのがベストと言えます。

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税理士で独立開業したら是非やってほしいこと

税理士になると、税理士会に入会します。

この税理士会では、多くの先輩先生方が様々な活動や行事を通じて税理士業界を支えています。

そこでお勧めしたいのが、税理士会での様々な活動(会務)や行事への参加(新入会員向けの懇親会を頻繁に設けています)。
仲間同士で色々と助けてもらえるからです。

例えば、税務上の判断から顧客とのトラブルまで、結構悩みは尽きなかったりします(特に顧客絡みの懸案は実に多い!)。

なので支部主催の勉強会などに、ぜひ参加してみましょう。
皆様、悩みなどをお互いにシェアしながら、解決策・打開策を見出しているようです。

あと、同期の税理士達同期会をつくってみるのもよいと思います。
税理士会を通じた交流よりも堅苦しさがなく、気軽に情報交換ができるでしょう。
これがホントにありがたく感じることがあります。

こんなやり方では独立は失敗してしまう

  • 間違った営業活動
  • 薄利多売や過度な値引きで営業しようとする
  • ミスの連発や大きな税務判断ミス
  • 従業員への丸投げ
  • 事務所内でのパートナーとの軋轢

間違った営業活動

営業活動の成否は独立の成否に直結するため、多くの人が(実務とは別に)これに腐心します。
異業種交流会への参加や税理士会主催の相談会などを考えている人もいるでしょう。

他方で、闇雲に名刺を配ったり、会合等に参加したりするだけでは、効果はほとんど期待できないもの。
顧客を確保できないどころか、ギブアンドテイクと称して逆にカモにされることすらあり得ます(典型例:強引に保険加入を迫られる)。

特に行き当たりばったりで独立しようとすると、そうなりがちです。

低価格や過度な値引きで営業しようとする

仕事欲しさのために、低価格をアピールしようとする新規開業者が後を絶ちません。

確かに、新規立ち上げの零細企業を中心に、顧問料の安さに引き寄せられる顧客はいるものです。

ですが、安さだけを前面に出せば、やがて事務所は疲弊してしまいます。
日常業務を適切に回すことが困難になったり、下手をすると採算が取れなくなってしまうのです(特に人を雇う時)。

また、一方的に値引きを要求してくる顧客も要注意です。
本来事務所がやるべきではいことまで求めてきたり、中には不適切な税務処理を迫ったりする事業者も皆無とは言えません。

ミスの連発や大きな税務判断ミス

会計事務所の業務には、細かい事務処理から大きな税務判断を伴うものまで色々とあります。
いずれにしても、当然ながらミスは避けたいものです。

身近なトラブルとしては、例えば、給与明細を取り違えて渡してしまったりすることなど。
顧客離れの原因につながります。

また、比較的大きな間違いとしては、消費税絡みが多いかと思います。
税理士損害賠償に発展することも少なくありません。

実際に「前の税理士を訴えたいんだけど」なんて話がでてきます。

従業員への丸投げ

これも実に多い。
所長(あるいは有資格者)がチェックしていないのですね。

例えば大昔、知人の事務所で次のようなケースがありました。

顧客は消費税の免税事業者なのですが、消費税分を売り上げ金額から抜いて処理してしまっていたとのこと。

(資料が提出されたままに)担当者が機械的に決算処理等していたようですが、
調査前日になって、領収書(レシート)控えと現金出納帳の金額が合わなくて慌てていました。

結局、担当従業員に丸投げしていると、こうなってしまうのですが、
プロとしては完全に失格です。

事務所内でのパートナーとの軋轢

共同事務所を運営するときは注意が必要です。

共同経営者の間で主従があれば別ですが、
対等な関係ですと、経営方針を巡り衝突したり、事務所の経費や備品のことで軋轢が生じたりするのです。

開業当初は予想しないものですが、事務所が軌道に乗ってくる頃に色々と問題が持ち上がってきます。

ですがこうしたトラブルは、結局、顧客の信頼失墜につながり、事務所の運営を阻んでしまいます。

パートナー選びは、婚姻以外でも慎重にしたいものです。

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最後に

税理士の独立開業について解説してきました。

冒頭でも言いました通り、今日では独立は決して易しくはありません。
また独立したと言っても、その実は監査法人等のパートだったり、予備校講師だったりします(もちろん、それはそれで決して悪くはありませんが)。

他方で、成功している人達もいます。
彼らに共通しているのは、勤務時代の早いうちから、将来を真剣に考え、しっかりキャリア設計をしてきたこと。
志高く、夢の実現に向けて邁進してきたのですね。

是非、皆様も彼らのあとに続いてもらいたいと思います。
ご成功を願っています。

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