公認会計士は30代40代には厳しい?特に未経験者の転職は無謀?

公認会計士は年齢層にかかわらず多くの人に注目されている資格です。
30代40代以上でも目指してみたいと思う人は多いでしょう。

ですがそのような人にとって気になるのが転職事情。
特に

  • 未経験だが年齢が気になる
  • 30代だが大手監査法人に入りたい
  • 会計士は監査法人しかキャリアの道はないのか?

など、懸念や疑問は尽きないものです。

筆者が勤務していた監査法人にも30代40代以上の方が入所される一方、転職自体が厳しかった人も皆無ではありませんでした。
ですが、後者の人も決して諦めることなく、それなりに活路を見出していったものです。

そこでこの記事では、30代・40代の未経験者を念頭に、大手監査法人への転職を含め幅広く可能性を探っていきます。

この記事の執筆者について

略歴:特許事務所→公認会計士・監査法人(パート含め3社)→弁理士→独立(会計事務所・特許事務所経営)

複数の士業(公認会計士・税理士・弁理士)を通じて様々な事務所・実務に携わる
監査法人・会計士事務所に通算、10年以上勤務(パート含む)
特に現場では20代から50代まで幅広い年齢層と仕事をした経験あり

目次

30代40代の公認会計士の転職事情

会計士試験に合格すると、多くの人は大手監査法人に入所します。

研修制度が充実していたり、幅広く実務経験がつめるなど、事実上、大手事務所が実務家養成の役割を担っているからです(なお、正式に公認会計士になるには3年以上の実務経験が必要です)。

先々のキャリアパスの選択肢も広く、若い合格者達に人気なのも納得のいくところです。

同様に、30代40代以上の人も監査法人に入所できるかが大きな関心事になるでしょう。

ですので、ここでは、監査法人への転職事情を年齢層に分けて示してみます。
注:転職状況が比較的良好であることを前提とします(就職難では厳しくなり、年齢的に5~10歳ぐらい若いスペックが求められます)。

年齢層監査法人への転職状況・求められる条件
30代前半・会計未経験可
・職歴が全くないと大手監査法人は難しい
・中小法人は職歴がなくても可能性あり
30代後半・会計未経験可
・大手ではビジネスに関連する職歴が必要
・中小法人は職歴がなくても可能性あり
40代以降・経理・財務などの会計に関連する職歴が求められる
・管理職等でのマネージメント経験も求められる
・英語が堪能等、特殊な技能やバックグラウンドがあれば可能性大
・中小法人では上と同様、弾力的なところもある

まず30代40代に共通して言えるのは、基本的に職歴が求められるということです(特に大手監査法人)。
受験勉強だけで30代を迎えたり、職歴があってもアルバイトだけ、では難しいということです。

特に30代の後半になれば管理職になる頃ですが、ビジネスと全く無縁の仕事(例えば学校の教員や調理師など)は職歴としての評価は厳しくなります。

ただし中小監査法人では事情が少し変わってきます。
中小法人は採用方針・基準にかなり幅があり、事務所代表者とコミュニケーションがうまくとれれば可能性はあると言えるでしょう。
30代で職歴にあまり自身がない人は狙い目です。

40代になると、一気にハードルが上がります(やはり30代と40代は大きく違うということです)。

まずマネージメントも含めてしっかりとしたビジネス経験が求められます。
また単に営業職や管理職をしていた、というだけでは難しいと言わざるを得ません。

やはり、財務や経理に関連する部署、もしくは監査法人側にとって魅力的かつ特別なバックグラウンドが不可欠になってきます。
ただし中小法人ですと、30代と同様、弾力的に扱ってくれるとこも皆無ではないでしょう。

なお、面接対策やエントリーシートの書き方等、準備次第で結果は変わってきますので、年齢にかかわらず諦めないでトライしてみることが大切でしょう(後述)。

30代40代の未経験者はどうしたらよいか

就職活動する男性

ストレートに大手監査法人に入所できればそれがベストです。

ですが、なかなか30代40代では思った通りにいかなかったりするもの。
就職難に遭遇することも否定できません。

そこでここでは、30代40代向けに様々なキャリアパスを示してみたいと思います。

予備校講師を経て大手監査法人を狙う

ここからは30代40代以上で、特に未経験の方を念頭に解説していきます。

上でも申し上げた通り、このクラスの方の求人は限られてきます。
大手法人に拘っていると就職はおろか、先々活躍できるチャンスを逃しかねません。

そこで選択肢を広げ、あらゆる可能性を模索していこうと思います。

先ずは会計士受験予備校の講師です。
お世話になった予備校では、毎年講師の募集をしていると思います。
これを活用するのです。

注目すべきメリットは次の通り。

  • 直ちに収入が得られる
  • (大手監査法人に就職した)予備校講師OBとのパイプを持てる
  • 公認会計士の登録要件を満たせるケースもあり(非常勤として監査業務に携われる等)

実は、過去就職難の頃もこのルートを活用した人は少なくなかったです。

いったん予備校講師をしながらチャンスを待ち、状況が好転したら監査法人に転職するのです。

また、予備校講師OBとのつながりを持てるので、40歳ぐらいまでは大手監査法人でも可能性があります。

特に、監査論などを教えていたりすると、法人入所後も昇進が早かったりするようです(具体的なケースを後述します)。

中小監査法人のパートナーを目指す

中小監査法人や共同事務所は、大手と違い年齢については比較的柔軟です。
むしろ事務所経営者との相性で決まる場合も少なくありません。年齢より人柄重視ということです。

中小事務所は、いわゆるアットホーム(家族的)なところがあり、居心地よく感じることが多そうです。

ここで良き人間関係に恵まれ、頑張れると感じたならば、パートナーを目指してみるのもよいでしょう。
大手よりも昇進の可能性があるかもしれません。

ただし注意点もあります。例えば

  • 監査の品質管理という点で、不安要素を抱えるリスクあり
  • クライアントが限られていることから、事務所経営が不安定になりやすい
  • OJTなどはあまり期待できず、新人にとっては監査スキルを身につけられるか不透明(特にパート勤務)

など。

今日では、大手や準大手はしっかりと品質管理がされており、それほど心配することはなさそうです。

対して中小事務所となると、

金融庁の検査結果によっては厳しい状況に追い込まれたり、クライアントの異動により事務所経営が不安定になったりします。

監査事務所にもよりますが、永続的に仕事を続けられるかとなると、不透明といわざるを得ません。

さらに、監査スキルを身につける、という点でも疑問が残ります。

特にメンバーがパート(非常勤)だけで構成されている事務所には注意が必要です。
パートで監査に従事するよりも、税務で独立を目指す方が、後々のためになるかもしれません。

なお、就職難では、1~2名募集のところに(大手に行けなかった)人達が殺到するので、中小は大手以上に狭き門になってきます。

個人事務所を経て独立開業を目指す

独立開業は士業の究極の選択肢です。

に公認会計士の独立は、実質的には税務での独立となります(税理士事務所の開業です)。

この選択肢について「今更、税務なんて…」と思われる人もいるかと思います。

ですが、やってみるとわかりますが、結構需要はあるのです。
たとえコンサル業務であっても、税務を無視した業務などは考えられないほどです(例:事業承継に伴う自社株評価など)。

ですので、状況によっては実務要件を満たせることを確認のうえ個人の公認会計士事務所も検討してみましょう。

実は、今の40代、50代以上のCPAで、同じような経験をしている人が少なくありません。

例えば、個人事務所を経営している会計士の先生方の中には、苦労された人が結構いらっしゃいます。
40歳未経験で業界入りした人、長期間無職だったうえ就職難で事務所のパートを掛け持ちしていた人、様々です。

互いの相性が大切になってきますが、こうした先生方にアプローチするのも一考です(求人も全くのゼロではないはずです)。

大手監査法人のような華やかさはありませんが、あなたの夢の実現に力を貸してくれるのではないでしょうか。

ただし、個人事務所にも注意点があります。

  • 給与が低い
  • 税務業務や単なる記帳代行では会計士資格を得るための実務要件が満たせない

給与面では、税務が中心で未経験だと、大手監査法人の初任給の3分の2ぐらいでスタートすることになります(年収にして350万~400万円ぐらい)。

また、実務要件については、パートで監査の補助ができるかどうか、の確認も不可欠です。

この中でも、特に年齢が高めなのに逆に給与が低いというのは、人によっては厳しいですね。
精神的に惨めな思いをする人もいるかもしれません。

ですがここは、おカネをもらって勉強させてもらっている、と発想を転換した方がよいでしょう。
特に自分の力で稼げるようになれば、大手監査法人の人達が羨ましくなることはないはずです。

30代40代で監査法人への転職を成功させたケース

ここでは筆者が知っている方(合格時、30代・40代)の具体的なケースを紹介します(全員、直接的な会計業務は未経験)。
どなたも一緒に机を並べて勉強したり、仕事場でご一緒させていただいた方々です。

Yさん(当時30代):システムコンサルティング→中小監査法人→大学研究職

有名国立大学院卒。
筆者がパートをしていた中小監査法人に入所してこられた方です。
前職はシステムエンジニアで、合格時は30代半ば
情報分野に精通しているだけあって、論理的に物事を考える大変優秀な方でした。
立場上、筆者は助言等をしたことがありましたが、実質的にはこちらが色々と学ばせてもらったと思っています。
ちなみに監査法人退所後は、会計の研究に励まれ、大学で教鞭をとられるまでになりました。

Nさん(当時30代):一般企業→予備校講師→大手監査法人(パートナー)

有名私大卒。
会計士の勉強していた予備校(講師業)から大手監査法人に転職された方です。
とにかく教えることが好きで、かつコミュニケーション能力に長けていたのが印象的です。
合格時(当時30代前半)は就職難だったこともあり、予備校講師をされていましたが、数年後、大手の監査法人に転職。最速でパートナーに就任されました。
職歴はもちろん、人柄やコミュニケーション能力次第で大手も十分可能であることを端的に示しています。

Hさん(当時40代):公官庁→大手監査法人→中小監査法人(非常勤)・独立開業

海外の大学を卒業。
公官庁の派遣で海外に留学・駐在されていたユニークな経歴の持ち主です。
合格時は40代前半。しかもビジネスの経験はないとのことですが、大手監査法人への就職を果たしています。
海外経験が豊富なことや語学が堪能であることなどが評価されたとのこと。その後、独立を期に中小監査法人(非常勤)に転職されました。
やはり高い語学力や海外経験は強いアピール材料になることは確かなようです(大企業や公官庁から海外留学に派遣されることは、メッチャ優秀であることのお墨付きを得ていることでもある)。

ご紹介したケースはほんのごく一部ですが、大学を卒業して直ちに監査法人に入られた人ばかりではない、ということです。

皆様、様々な経歴を経て、自分なりに会計士としての道を切り開いていきました。

参考までに、筆者のケースも簡単に示しておきます。
筆者は30歳手前で合格を果たしましたが、当時は大変な就職難。学生もしくは20代前半でないとなかなか厳しい状況でした。
ちなみに筆者は会計とは全く別の業種に従事していましたが(特許関係)、約20倍の狭き門をなんとかくぐることができました。

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30代40代の転職成功者の共通点

上のケースでおわかりの通り、30代・40代でも監査法人に転職できる方には共通した特徴があります。

それは

  • しっかりとした職歴や卓越した技能があること
  • 人柄に良く、コミュニケーション能力が高いこと

です。

要するに(合格者の多くが20代が占める中で)年齢的なハンデを克服できるプラス面を備えている、ということです。
決して会計や財務畑出身である必要はありません。

また、今日では転職エージェントが充実していますので、転職活動は昔に比べ、やりやすくなっていると思います(後述)。

30代40代会計士が転職を成功させるには

転職を成功させるための対策についてまとめておきます。

上で解説したことと重なりますが、結論的には次の3点です。

  • 自分のこれまでの職歴や強みをアピールする
  • 採用側の視点や立場を理解する
  • 転職エージェントを活用する

注意したいのは、(30代以上の方には釈迦に説法となりますが)相手(採用側)があっての就活ということです。

いくら強みや職歴が優れていても相手が納得してくれなければ意味がありません。
最悪、面接も単なる武勇伝や自慢話の場で終わってしまうことすらあり得ます。

言い換えれば、採用側にこの人に是非うちに来てもらいたいと思ってもらう必要があるのです。

でも、これって意外と難しい。
しかも採用側は(人手不足であっても)かなりシビアに選考を進めていきます。

そこで忘れてはいけないのが転職エージェントの活用です。

エージェントは求職者側だけではなく、採用側の立場(代理)も兼ねているため、一方通行にならないようにしています。

ここでは特に会計士の転職に強いエージェントを紹介しておきます。
※各エージェントのプロモーションを含みます。

スクロールできます
マイナビ会計士MS-Japanレックスアドバイザーズジャスネットキャリア
得意分野公認会計士管理部門
士業
公認会計士
税理士
公認会計士
税理士
主な年齢層20代・30代20代~50代20代~40代20代・30代
設立(歴史)1973年1990年2002年1996年

このうちマイナビ会計士ジャスネットキャリアは、基本的に30代までとなりますが、MS-Japanレックスアドバイザーズは40代でも対応可能です。

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(補足)年齢と人間関係について~30代40代にとっての転職後の懸念~

最後に(転職してからの)年齢と人間関係についてコメントしておきます。

特に気になるのが、年下の人から指導や指示を受ける、という点。

結論としては、
会計士の世界は比較的年齢がバラけていますし、紳士的な人が多いので、あまり心配する必要はないでしょう。

基本的には自然体が一番です。

「プライドを捨てよ」などとアドバイスする人がいますが、それでは変に卑屈になってしまって、人間関係がギクシャクしかねません。

ただ、特に40代以上の人の中には気になる人もいると思います。

ですので、一言だけ付け加えておくとすれば、

人生経験のある者らしく、ゆとりおおらかさをもって接する

と良いでしょう。

年下の指導や助言も余裕をもって受け入れられますよ、という年齢相応の器のようなものです。

卑屈になってしまっては余裕や器どころではないですよね。

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おわりに

30代40代の未経験者を念頭に置きながら、公認会計士の転職事情について解説してきました。

総じて、こうした年齢層の転職は、会計士といえども相当厳しくなっています。

ただし、それが全てかというと、少し実情は違います。

会計士に限らず、士業で活躍している人達の中には、結構、紆余曲折というか、人生の思わぬ浮き沈みを経験している人が少なくありません。

更にいえば、若いうちの就職や転職の成功=人生の成功・充実とは限らない、ということです。

ですので、皆様も世俗のマニュアルばかりにとらわれないで、ご自身の信じる道を歩んでもらいたいと思います。

活路はそれなりに開けていくものです。

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