今回は税理士の営業活動についてのお話です。
皆様ご存じの通り、今日、税理士事務所を軌道に乗せるには、実務能力だけでは足りず、顧客や仕事の獲得が不可欠です。
2世事務所ならともかく、ゼロから始めるとなると、ここで事務所の成否が決まると言っても過言ではありません。
ところが多くの税理士が営業を苦手とするため、これが結構難しい。
特に今の時代、 小手先の営業トークやテクニックだけでは限界があります。
そこで、この記事では、営業が苦手な人を念頭に、効果的な営業及び具体的な集客方法について考えていきます。
・実務経験、通算20年以上
・独立までに大・中・小の3つの事務所に勤務(他に特許事務所経験あり)
・資格:税理士・公認会計士・弁理士
税理士の営業成功の決め手とは
最初に結論です。
税理士の営業で大切なのは、
- 自分の得意分野や専門分野とリンクさせて、これらをアピールしていく
- インターネットをフル活用するとともに、信頼できる人たちと交流する
の2点です。
前者が売り込むべき対象なのに対して、後者はいかに売り込むか(営業手段や営業ルート)に該当します。
信頼がすべての士業の世界では、
「この先生は凄そうだ、頼りになる」というインパクトを与えられるか、が先ずは決め手となります。
まだ、いくらインパクトが与えられても、然るべき人々に届かなくては意味がありません。
営業する(アピールする)手段やルート、そして、つながりを持とうとする人たちの信頼性も軽視できないのです。
言い換えれば、会計事務所のパンフレットや名刺を単に配って回るだけでは、営業効果は殆ど期待できないでしょう。
税理士の集客方法について
事務所ホームページを立ち上げる
今日、営業する上で必須になりつつあるのが、事務所HPです。
自分で作成してもよいし、専門のプロに依頼してもよいでしょう。
後者であれば、コストがかかりますが、SEO対策も含めて集客効果はかなり期待できると思います。
このHPで特に大切なのは、所長プロフィールと次の項で述べるブログです。
所長プロフィールでは、専門分野や得意分野、そして経歴などを記載しておきます。
大切なアピールポイントです。
また、できれば料金体系についても開示しておくとよいでしょう。
顧客の関心事の一つですから。
ただし、決して安さをアピールするのではなく、透明性を確保するのが狙いです。信頼性につながります。
税理士業界は高齢化が進んでいることもあって、IT分野については手薄になりがちです。
裏を返せば、これから独立しようとする人たちにとってはチャンスといえます。
ブログを開設する
ブログは所長の人柄や力量などを表す媒体手段です。
そこでまず大切なのは、コンスタントに更新すること。
これらを通じて、やる気や熱意はもちろん、信頼性を印象付けることができます。
内容としては、例えば、
税制改正についての最新情報や動向など、タイムリーな話題について書いていくとよいでしょう。
また得意分野に関する事例などを解説するとともに、自分の見解などを紹介していきます。
また、ブログと併せて、ツイッター等のSNSを活用することもおススメです。
ここでもちょっとした税務の話題を伝えるようにします。
ツイッターでは特に親しみやすさを前面に出すことがポイント。
税理士にありがちな堅苦しさを払拭できれば、ユーザーとの距離を縮めることができます。
他の士業等の専門家と交流する
リアルの世界での営業活動としては、まず他士業等との交流が挙げられます。
例えば、社会保険労務士、行政書士、中小企業診断士、不動産鑑定士などですが、
それ以外にも、コンサルタントなどの専門職の方々とのコンタクトもよいでしょう。
こうした方々は、各自の顧客から「○○に詳しい人がいたら紹介してください」といった依頼を受けていたりします。
こうしたことを念頭に、自分の専門分野や信頼性をアピールしていきます。
ただし、税理士は数が多く、競争も激しいので、これらの専門家には既に他の税理士がビジネスパートナーになっていたりします。
もちろん、自由競争ですので、積極的にアプローチしていくこともできますが、なかなか難しいと言えます。
そこで、もう一つの方法が、自分自身が他の専門分野に入っていくことです(後述します)。
時間的に遠回りになりますが、差別化できる専門性と顧客開拓ルートの両方を同時に確保できます。
注意したい営業ルート
- 税理士会の税務相談や無料相談会への参加
- 保険会社等とのギブアンドテイク
- 異業種交流会や名刺交換会への参加
税理士会に入会したら、確定申告などの無料相談を依頼されることがあります。
記帳指導等、経理や税務の支援に参加する機会もあるでしょう。
大昔は、こうした会務を通じて自分の顧問先につなげた時代があったようですが、
今日では、あまり期待しない方がよいと思います。
絶対に不可能とは言い切れないものの、中には
非協力的な事業者や「やってもらって当たり前」のような納税者もいたりします(筆者も不愉快な思いをさせられたことがある)。
次に考えられるのが保険会社等とのギブアンドテイク。
税理士会に入会して、新入会員向けの会合に参加しますと、保険会社のセールスを受けることになる思います。
こうした人たちと名刺交換すれば、翌日から売込みの電話がジャンジャン鳴るでしょう。
では、保険に加入したことで、その恩恵(見返り)を受けられるかと言えば…
なので、保険屋さんとの付き合いは、ご自身のニーズも考えながら慎重に判断した方がよいでしょう。
あと、よく話にでるのが、異業種交流会や名刺交換会などへの参加。
こちらも絶対ダメとまでは言いませんが、正直あまりお勧めできません。
交流会等に集ってくる人たちは何らかの売込みの意図があってやってくるのですが、
いろいろと買わされたりしてトラブルのもとになりかねないのです。
結論として、(ギブアンドテイクは大切ですが)経験的に見ても、あまりWin-Winの関係にはならないのではないでしょうか。
顧客を選ぶことはあり?
顧客の開拓が大変な今日で、顧客(仕事)を選ぶことなどあり得ない
こう考える人も少なくないと思います。
また現実的には、背に腹は代えられない、えり好みしていられない、といった人もいるでしょう。
ところが、何でもかんでも引き受けてしまうと、
事務所が後々困った事態に直面してしまうかもしれません。
特に中小零細企業の中には、慎重にすべきところが少なくないのです(特に新規立ち上げの零細企業や、会計事務所をコロコロ変える事業者など)。
例えば次のようなケースが目立ちます。
- 時間や約束を守らない
- 過度な値引き要求していくる(酷い場合は報酬を支払ってくれない)
- 税理士を雑用係または何でも屋としか見ない
- 脱税まがい・違法処理を要求してくる
- 顧問を続けたければ、連帯保証人になってくれ、なんてことも…
勤務時代の会計事務所では、比較的優良な顧客が多かったと思いますが、
新規に顧客を開拓するとなると、そうした顧客の確保が難しいことに気づかされます。
なので、事務所としての収益性や安定性を確保するためにも、少しでも良質な顧客開拓に力を注ぐべきです(そうした意味でも、冒頭で述べた営業のポイントが大切になってきます)。
なお、優良な顧客は顧問料の安さばかりを求めてくることはしません。
料金に見合うサービスの質を求めてくるのです。
効果的な営業をするために税理士がすべきこと
専門分野を磨く・得意分野を持つ
冒頭でも述べた通り、税務・会計における自分の得意分野は、アピールの対象となってくるものです。
具体的には、例えば
- 相続をはじめとする資産税分野が得意である
- 医療系の専門である
- ITをはじめとするベンチャーに強い
などです。
特に、これらの分野は少子高齢化やIT技術の浸透等、時代の流れにも沿うものです。
これらにつき、業界で第一人者になるくらいのつもりで取り組むべきでしょう。
注:国際税務も時々挙げられるのですが、個人で対応するのが必ずしも容易でなく、
むしろ大手税理士法人の得意とする分野ですので、一般的にはあまりお勧めはできません。
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特殊分野に飛び込んで異端児になる
伝統的な税理士業務以外の分野に精通することもおススメです。
意外に思われるかもしれませんが、これができますと、営業活動は事実上ほとんどいりません。
例えば、
- IT企業でWebマーケティング等を経験する
- 本格的な戦略系コンサルティング会社等でコンサルティングを手掛けてみる
- 転職斡旋企業や広告代理店などで人材やプレゼン関連のノウハウを身につける
などです。期間は1~2年もやれば十分なはずです。
ポイントは、税務関係とは(一見すると)無関係に見える業界に身を置いてみることです。
各業界の実務ノウハウはもちろんですが、そこで構築される人とのつながりが貴重です。
その(非税理士業界の)人達と、その業界について深く会話ができることが差別化につながります。
ただし一点注意することがあります。
いくら差別化ができるとはいえ、ご本人のやる気(熱意)があることが前提です。
「何かワクワクしそうだ、面白そうじゃないか」ぐらいで構いません。
あれこれ考えずに即行動できたら、成功に近づいていると言えるでしょう。
差別化を法的資格で担保する<ダブルライセンスを狙う>
発想は、先の特殊分野と実質同じです。
例えば
- 中小企業診断士
- 社会保険労務士
- 不動産鑑定士
などです。
中小企業診断士でしたら、広く経営の観点から顧客にアドバイス等ができますし、社会保険労務士でしたら、保険や労務も含め、一つの事務所でワンストップでサービス提供できます。
不動産鑑定士でしたら、資産税と相性がいいでしょう。
またダブルライセンスの取得は、他の士業の仲間入りを意味します。
そこでの交流の質や深度は、単なる異業種交流とは全く違ってきます。
しかも士業間での橋渡しもできたりします。
これだけでも頭一つ飛び出ているので、これがいわゆる営業活動に自然になってしまうのです。
ただし、こちらは別に国家試験等の受験勉強をしなければなりません。
モノによっては時間とカネがかかりますし、試験も難しかったりします。
最後に
実は税理士の営業にも色々とあるのですが、
無理をしたり、何でもかんでも受任したりすると、収益的にも業務効率上も悪影響が生じてくるものです。
確かに成功している事務所には、ギラギラ営業している、といった印象は殆どありません。
むしろ信頼の流れに沿って(自然な形で)仕事がきている感じがします。
では、そのためにはどうしたらよいか
今回はこうした点を念頭に解説してきました。
参考にしていただけたら幸いです。
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