弁理士試験の短答式の勉強法【暗記のコツや過去問・答練の使い方】

弁理士試験の中でも、短答試験は範囲が広く、暗記すべき分量も膨大です。

また、やってみると分かりますが、
試験問題が結構難しく、真面目に勉強していても、なかなか正解に至りません。

そこでこの記事では、弁理士短答試験の対策について徹底解説していきます。

この記事ではこんな人を念頭にしています!
  • 膨大な勉強量を前に、どのように勉強を進めてよいのか悩んでいる人
  • インプットの段階で息切れしている人
  • 過去問を解いてみて自信を失いかけている人

ちなみに筆者は、短答は実質受験2回目で合格しました(60点満点中48点、論文・口述は翌年合格)。
つまり短答・論文ともに一度失敗を経験しているということ(しかも多くの受験生が陥りがちなパターンでもある)。

ですので以下での解説は、失敗しないための(失敗や間違いを踏まえた)勉強法でもあります。

この記事の執筆者

略歴:特許事務所→公認会計士・監査法人→特許業界復帰→弁理士→独立(特許事務所・会計事務所経営)

特許事務所を営む父親の長男に生まれる。
その関係もあって学生の頃から特許業務に従事。
ところがある日、急にビジネスの広い世界を知りたくなり、公認会計士業界に飛び込む。
父親の健康事情及び自身の適性を考慮して特許業界に復帰、その後、事務所を承継。
資格:弁理士・公認会計士・税理士

目次

弁理士短答試験の特徴

まず短答試験の特徴を簡単にまとめておきます。

  • 試験時間は3時間半で問題は60題
  • 合格率は約10~20%(年度によって変動します)
  • 各科目分野で4割の足切りラインがある
  • 問題文が長いうえ、相当細かい知識が問われる
  • 正しいものはいくつあるか」という問題もある

弁理士短答試験は、近年、合格率が変動しています。
昔は概ね30%ほどでしたが、試験制度を変更した頃から10~20%で推移しています(ちなみに合格基準は60点満点中、39点のことが多い)。

また、膨大かつ正確な知識が求められる一方、問題文が長く、相当な分析力、情報処理能力が求められます。
消去法が通用しない問題もあり、質、量、合格率、どれをとっても厳しいといえます。

筆者が弁理士短答試験を受験してみた感想

次に筆者が実際に受験してみた感想を簡単に述べておきます。

上でも触れましたが、とにかく一つ一つの設問が長く、かつ時間的に相当厳しいものでした。

しかも単純に知識を問うだけの問題、機械的に処理できる問題は少なめです。

言い換えれば、相当の速読力と共に国語読解力が必要ということです。

筆者の場合、特に速読力が弱く、最後までなんとかたどり着いたものの、飛ばした問題もあったので実際は時間切れでした。

他方、周囲の合格者に聞いてみると、結構、皆さん完答していたとのこと(人によっては見直しの時間もあったとか)。

総じて(理系向けの試験であっても)国語力を含めた、受験生のレベルの高さが窺えます。

ちなみに合格者は東大京大などの国立大出身者が多いです(彼らはセンター試験の国語でも8~9割を普通にとる)。

もう一点、注意したいのが手洗い。
3時間半の長丁場ですので、トイレが近い人(特に年齢が高めの人)は注意が必要です。

トイレに行くだけで4~5分はロスしてしまいます(点数にして3~4点分?)。
意外と軽視されがちですが、当日の水分管理は特に注意した方がよいでしょう。

ただし、こんな過酷な短答試験ですが、クリアすれば最終合格はかなり近い、というのが筆者の感触です。

特に論文選択免除の方は、短答免除と併せてその後の勉強の負担はかなり軽くなります。

弁理士短答試験の対策①:インプット編

短答の勉強に先立ち、全体像をつかんでおく

ここからは具体的な対策について解説していきます。

弁理士短答試験の勉強では、原則として個々の条文を一つ一つ丁寧にみていきます。
そのため(予備校の)短答式用のテキストは分厚いものとなっています。

ただしいきなり、この勉強を始めると、あまりに細かすぎて、途中で何をやっているか分からなくなってしまいます。
「木を見て森を見ず」というやつです。

そこで(細かな条文の学習に入る前に)先ずは各法律の全体像や体系を見ていきます。
例えば、特許法でしたら、その手続きの流れや、特許制度の考え方などを大まかに捉えていくのです。

具体的な短答対策では、この全体像を踏まえたうえで、自分が全体の中のどこを勉強しているのか意識していくことが大切です(単に覚えただけでは混乱してしまい、アウトプットで知識が生かされません)。

具体的なインプットの進め方

短答試験の要は、いわゆる四法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)です。
まずはこれをしっかり見ていきます(論文や口述のベースにもなっていきます)。

ポイントは次の通り。

  • 特許法、実用新案法、意匠法、商標法、を横断的に整理しておく
  • 主体、客体、時期、手続をしっかり意識しながらインプット
  • 情報は一元化しておく

この4つの法律は似たような構成になっていますので、特許法を一通り勉強した後は、この特許法と比べながら見ていくと効率的です

その際の教材としては、四法対照の法文集が大変使いやすく、オススメです(ただし、初心者には使いづらいので、お金はかかるが入門時は別の法文集が良い)。

また、短答では細かい箇所を覚えることになりますが、
(理解できても)すぐに忘れてしまったり、他の似たような規定とゴチャゴチャになったりします。

そこで通常やるのが、条文にマーカーを引いていくこと。

ただし注意点があります。
なんとなく勉強した気になりますが、ただランダムにマーカーしても頭に入りません。

そこで、オススメなのが、できるだけ主体、客体、時期、手続を明確にして色分けすることです。
主体は青、客体は黄、時期は緑、手続は…などと工夫するのも良いでしょう。

また、一つの参考書、或いは条文集(やはり四法対照の法文集がオススメ)にまとめながら情報の一元化を図ります。
特に短答の過去問を解いていくと、色々とメモをすることになりますが、ここに(統一して)記入していきます。

その上で、この一元化された教材をフル活用して、通勤途中や昼休み中に繰り返し復習・記憶していくのです。

🍀法改正事項は頻出マターです:
特許法をはじめ、知財関連の法規(条約を含む)は頻繁に改正されるのですが、
そこが(短答、論文問わず)試験では必ずと言ってよいほど狙われます。
予備校でも情報提供があると思いますが、改正事項の解説本などを通じて必ず確認しておきましょう。

弁理士短答試験の対策②:アウトプット編

ここでの勉強の中心は過去問です。
この過去問10年分を3周します(ただし確実に出来るものは2周でOK)。

設問はどれも難しく、消去法が通用しないこともあって、1周目は殆ど歯が立たなかったりします(自力で解答している実感が湧くのは、2周目以降になるでしょう)。

ですが、全く心配いりません。

大切なのは、答があったかどうかではなく、一枝一枝をしっかり吟味し、正解、不正解の根拠を明確にしていくこと。

これらの作業をやらないと、ただの論点主義的な勉強に陥ってしまいます。
繰り返すうちに(条件反射的に)解答が浮かぶようになりますが、それだけでは未知の問題への応用がききません。

また、同時に該当する条文を必ず確認するように!
条文と過去問を行ったり来たりするのです。

ここで四法対照の法文集を使います。

この法文集に書き込みをしていくのですが、その書き込みの作業は2周目以降がよいでしょう。
1周目にやると、解説を写す作業が勉強の中心になってしまうからです。

なので、1周目は問題を考えることと解答の根拠の理解に注力していきます。

🍀短答過去問に取り組むタイミングは重要:
短答の過去問は、各科目(例えば特許法)を一通り終えた後ではなく、各章(例えば特許の出願手続)ごとに集中して取り組むことが大切です。
こうすることで理解や暗記が進みますが、
一通り科目が終わってからだと、忘れてしまい学習が無駄になってしまいます。
なので過去問は、年度ごとに収録しているものではなく、章や単元ごとに編集したものを使っていきます。

弁理士短答試験の対策③:直前期について

ここでのポイントは3つ。

  • 時間を計って一年分ごとに(実戦さながらに)解く
  • 予備校の短答摸試を受ける
  • 条文を詰め込めるだけ詰め込む(インプットに漏れがないように)

試験時間は3時間半ですが、(何度もやっているはずなので)実際は2時間~2時間半ぐらいに短縮して取り組んでみます。
要するにスピードを意識するのです。

ただし、答が既に分かっているものも多いので、実戦練習としては効果が薄れてきていることも否定できません。
条件反射的に解けるようになっているのはいいのですが、問題をよく読まなくなったり、考えなくなったりするのです。

ですので、(覚えてしまったものを呼び起こすのではなく)しっかり読んで考えながら解答していきます。

また、この過去問慣れのマイナス面に対処するためにも、予備校の短答答練や模試を受けておくとよいでしょう。

🍀答練では問題ごとの正答率を要チェック!:
予備校の答練であれば、採点後の講評等に各問題の正答率(受験生のどれくらいの割合が正解できたかを示す指標)が載っていると思いますが、これを確認していきます。
皆が出来ているところを落としていないかチェックするためです。
正答率はおおむね50%を判断基準にするとよいでしょう。

これを上回る設問で間違えた場合は要注意ということです。

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短答試験の罠?いわゆる”割れ問”には要注意!

問題の質についてですが、多くの年度でいわゆる”割れ問(予備校間で正解が割れる問題)”が発生します。

つまり、唯一の正解を見出しづらい難問(あるいは珍問)が出題される可能性があるのです。

翌日特許庁から公式に正解が発表されますが、議論となることもあります。

大事なのは、本番で万一こうした”割れ問”に出くわしてもハマらないこと(時間が無駄に過ぎていきます)。
ここで勝負がつくとは思えません。

試験直前中、「???」と感じたら(完璧を狙わずに)ドンドン飛ばすことも必要でしょう。

さらに言うと、普段、予備校の良問ばかりに慣れ過ぎていると、本番で臨機応変に対応できなくなるおそれがあります。
ですので直前期には(普段利用している予備校とは別の)他の予備校の模試も受験しておくと良いでしょう(他流試合を経験しておくのです)。

最後に一言

短答試験が終わると、1カ月半ほどで論文試験を迎えます。
あまり時間がありません。

確かに短答試験に合格すれば2年間の免除期間が与えられますし、中には論文は翌年以降に合格するつもりの人もいるでしょう。

ですが、やはりで論文を頑張って受けてみることをお勧めします。
特に短答で39点以上取れている方は、少なくとも論文の勉強にすぐに取り掛かるべきです。

仮に今年はダメでも、本試験を経験しておくこと、そしてそのための準備を早く始めることは必ず来年につながります。

最後になりましたが、皆様の一日でも早い試験合格を願っています。

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