弁理士試験の論文試験の勉強法|難しそうな問題ほど基礎力が決め手!

近年、弁理士試験は難化傾向にあります。

中でも論文試験は短答合格者同士の競争であるうえ、特許を中心に難易度はかなり高いものになっています。
初めて問題を見る人はゾッとするかもしれません。
また、上手く答案が書けず悩んでいる人もいるでしょう。

でも心配する必要はありません。

難しい問題は誰もできず、差がつくことはないうえ、答案の書き方にしても、然るべきパターンがあったりします。

そこで今回は、難易度にとらわれることなく、着実に勉強を進められるよう、弁理士論文試験の対策について解説していきます。

執筆者紹介

略歴:特許事務所→公認会計士・監査法人→特許業界復帰→弁理士→独立(特許事務所・会計事務所経営)

特許事務所を営む父親の長男に生まれる。
その関係もあって学生の頃から特許業務に従事。
ところがある日、急にビジネスの広い世界を知りたくなり、公認会計士業界に飛び込む。
父親の健康事情及び自身の適性を考慮して特許業界に復帰、その後、事務所を承継。
資格:弁理士・公認会計士・税理士

ちなみに筆者は、短答・論文ともに受験2回目で合格しました。
つまりそれぞれ一度失敗を経験しているということです。
ですので以下での解説は、失敗しないための(失敗や間違いを踏まえた)勉強法でもあります。

目次

弁理士論文試験の特徴

ここでは簡単に弁理士論文試験の特徴を確認します。

  • 合格率は25~30%
  • 最終的な評価は素点ではなく、標準偏差による調整後の点数で行う(要するに偏差値)
  • 各科目で足切りがある
  • 短答的なところがある

具体的な勉強で注意すべきは3番目と4番目です。

特に論文試験は問題文が長い一方、短答試験的な側面があります。
設問によっては条文や理由とともに簡潔に答えていくことも少なくありません。

ですので、短答で習得した、瞬発的な分析力が威力を発揮しますし、知識的にも短答の勉強がしっかり生かされるのです。

筆者が弁理士論文試験を受けてみた感想

参考までに、筆者が実際に弁理士論文試験を受けてみた感想を述べておきます。

ズバリ言うと、試験結果は蓋を開けてみないとわからない、というのが正直なところ。

皆さん、(当たり前ですが)一発勝負の本試験に合格するために勉強しています。
勉強のための勉強をしているわけではなく、予備校の(答練の)ための勉強をしているわけでもありません。

ところが、近年は難化傾向もあって(あれだけ勉強したのに)受験の歯ごたえというか、手ごたえが十分感じられなかったりします。

ただ時間に追われ、かろうじて最後までなんとか答案を埋めた、などという受験生もいるでしょう。

それでも結構、合格しているのですね。

逆に筆者などは、「これはイケたはず!」と思って蓋を開けてみたら(特許庁の掲示板を見てみたら)番号が無かった…という哀れな経験をしています。

しかも採点者によって点数にバラつきが生じたり、予備校での成績と本番の出来との間に乖離があったりで、最後まで(合格発表まで)心が休まりません(結果、口述の勉強を始めるのが遅れてしまう)。

やはり試験である以上、どうしても試験特有の不確実性が付いて回る、あるいは100%完璧はあり得ない、
ということで気持ちの余裕というか、開き直りも必要ではないかと感じています。

弁理士論文試験の攻略のポイント

  • 誰もができるところを落とさない
  • アウトプット(答練)が勉強の中心

冒頭で申し上げた通り、難しい設問では差がつきません。
大切なのは、誰もができる(書ける)箇所を落とさないようにすることです。

また、足切りもあるので、得意科目を伸ばすよりも、先ずは苦手科目をつくらないようにします。

論文の勉強で具体的にやるべきことは次の通り。

  • 出題パターンと答案構成のパターンを学ぶ
  • 趣旨や定義、そして論点、判例を覚える
  • 措置・手続きは、テンプレートとして予め用意しておく
  • 答練では事例の当てはめを特にしっかりと

1番目から3番目がインプットに該当しますが、実際には4番目を中心とするアウトプットが勉強の中心となります(そのため予備校の答練受講は必須です)。

弁理士論文試験の対策①:インプット編

先ずは具体的な出題パターンについて。

  • いわゆる一行問題:条文規定、趣旨など
  • 事例(出願の場面):出願手続、拒絶理由と中間対応
  • 事例(侵害の場面):侵害の認定、抗弁・無効審判・訂正、その他の措置

といったものが主流です。

また、論文の過去問や答練をやると分かってきますが、答案の書き方・流れにはパターンがあります。

条文の内容自体は短答でマスターしていますので、このパターンの習得、及び趣旨や判例等の暗記が論文のインプットに相当します。

答案の書き方の勉強法は次の通り。

  • 過去問等の模範解答を通じてパターンを習得してしまう(特に事例の当てはめの部分)
  • 特許50問、意匠・商標各30問ほど、同じ題材(問題)に絞って繰り返す(あれこれ手を出しても身につきません)

特に条文の当てはめ箇所は、なかなか自分の言葉では上手く記述できないものです

ですので最初は(少数の厳選した)手本となるものを真似してしまいます(注:手本とする解答はコンパクトなものを使うこと。冗長的なものは再現できません)。

弁理士論文試験の対策②:アウトプット編

答案作成のポイント

事例問題のアウトプットでは

事案の分析→条文(何条の問題か)→事例の当てはめ→(判例or要件解釈)→結論

を意識していきますが、
解答のポイントは

  • 趣旨や判例絡みはインプットしたものをキーワードを使ってコンパクトに再現する
  • 条文の要件に事例を当てはめる(ここに判例や解釈を入れることも少なくない)
  • 措置・手続のテンプレートを事前に用意しておく
  • 長い問題は設問を先に見てしまう

こと。

とにかくすばやく事案を分析したうえで題意を把握し、当てはめを簡潔にまとめる必要があります。
これを答練で訓練していきますインプットした当てはめパターンを実践・応用していく)。

また、出題の一環として手続や措置も問われます
例えば

  • 出願の場面:補正、分割、出願の変更、審査請求、補償金請求権など
  • 侵害の場面:訴訟、無効審判、特許法104条の3の主張(無効の抗弁)、訂正、先使用権の主張など

これらの手続や措置を単純に列挙する設問は少ないものの、答案作成上、自分で想起することは必要です。
なので、これらについては事前にテンプレとして頭の中に用意しておき、失念や取りこぼしのないようにしていきます。

🍀論文では万全の守りこそ最大の攻め!
現在の試験傾向は、特許を中心にボリュームがあり、時間的に大変厳しいものになっています。
受験生のレベルからみても、論述自体の精度や深さでは殆ど差がつかないといえるでしょう。
むしろ怖いのは、題意外しや項目落とし。
何条の問題か、どんな措置や手続を求めているのか、という段階で外してしまうのです。
これらを全て落とさず、拾い上げることができれば、合格は相当近いはずです(多くの受験生がこの初歩的なところでヤラかします!)。

答練を活用する際の注意点

  • 答練では自分の書いた答案が最高の教材!
  • 採点講評を読む

どうしても論文の答練では順位や点数が気になってきます。

確かに答練の目的には、自分の相対順位を知ることもあるのですが、
多くの人がその順位や点数に一喜一憂するだけだったりします。

また、復習に際しては、(解答解説は読むのですが)自分の答案には目を向けなかったりします。

ですが、実は自分の答案こそが取り組むべき教材であり、学力向上のヒントが隠されています。

なので、(あまり良い気がしないものですが)必ず返却された自分の答案を、徹底的に読み返してもらいたいと思います。

そこ(答案)に書いてあることで得点(合否)は決まってしまいます!

あともう一つ。
(答案返却の際に渡される)採点講評に目を通すことも大切です。

ここでは全体の講評とともに受験生が間違いやすいところなどが指摘されているはずです。

また、これらを通じて皆ができている箇所を落としていないかも確認できます。

皆ができない箇所は構わないのですが、自分だけが落としたとなると、要注意です。
相対評価の弁理士試験では致命傷となり得ます。

弁理士論文試験の対策③:論文直前期について

時間を計って過去問にトライする一方、予備校の模試も積極的に受験します。
もちろん趣旨や判例もキーワードとともに漏れのないように要チェックです。

また、この直前期に特にお勧めしたいのが、いわゆる他流試合

同じ予備校の答練ばかり受けていると(それに慣れてしまい)本試験で今までと違う傾向の出題がされた場合、面食らってしまうかもしれません。

ですので自分が普段利用している予備校とは別に、他所の予備校の模試も受験してみることをお勧めします。
どんな問題が出題されても、何とか競争に生き残るための実戦訓練です。

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間違った論文への取り組み方

  • 答練を受けずに問題と解答・解説をよむだけ
  • 実務の視点で答案を書く

弁理士試験は仕事をしながら受験する人が多いと思います。

忙しいことを理由に(答練を受けず)問題と解答・解説だけ入手して、これらを読んでマーカーしてオシマイ、という人も散見されます。

これでも結構、勉強した気になるのですが、全くアウトプットになっていません。

やってみると分かりますが、基本的なことですら、いざ自力で答案を作成しようとすると、なかなかうまく書けないものです。

また、もう一つ陥りがちなのが、実務の視点で答案を書いてしまうこと。

弁理士試験では、模範解答が用意されていて、そこから外れる答案は基本的に評価されません。
実務能力や実務的解答は全く期待されていないのです。

それどころが、それをやってしまうと、想定している模範解答からどんどん外れてしまいかねません。
結果として、上で述べた、項目落とし、題意外しをやってしまうのです。

例えば、かつて特許の試験科目で、早期権利化のための措置について述べなさい、という問題がありました。
これに対して特許庁の用意した解答は、なんと、実用新案への変更。

実務でクライアントにこんなアドバイスをしたら信用を失ってしまいますが、
これが弁理士試験なのです。

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最後に一言

最後に、論文試験の後のことについて一言申し上げておきます。

それは、一息ついたら口述試験の勉強を始める、ということです。

特に論文は(短答と異なり)合格発表を見てみないと合否がわからないものですが、
他方で、口述は論文の発表から3週間しかありません。

特に、口述試験は合格率が年度によって変動するうえ、試験問題や試験委員によって当たり外れがあったりします。
そうした運・不運を少しでも避けるためには、少しでも早く口述対策を始めるべきなのです。

最後になりましたが、皆様の一日でも早い弁理士試験合格を願っています。

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