税理士に将来はない、などと言われ続けて相当の年月が経過しました。
確かに、AIの台頭や税理士の過当競争等により、税理士の存在意義とその将来性が危ぶまれています。
ですが結論的には、形態はともかく、その職務自体は存続していく考えられます。
もっとも、それは良いことばかりを意味していません。
むしろ厳しい側面があるからこそそう言えるのです。
そこでこの記事では、こうした点を念頭に、税理士の将来性と生き残るためにすべきことについて考えてみたいと思います。
税理士を目指される方は、是非参考にしてみてください。
税理士の将来性を危うくする理由
税理士の将来性を危惧する声は決して小さくありません。
しかも、それにはそれなりの根拠があるのです。
それが次の3つです。
税理士にご興味をお持ちの人なら誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
- AI化やRPAの普及による会計業務の自計化
- 中小企業の減少
- 税理士の過当競争
少しコメントしてみます。
会計事務所は長い間、一般に記帳代行や税務申告が業務の大部分を占めてきました。
ところが、会計ソフトやクラウドサービスの導入により、一般的な業務、特にルーティーンワークは会計事務所の業務としては成り立ちづらくなってきています。
またそこまでいかなくとも、報酬単価のより一層の低下により、このままですと会計事務所の経営自体への圧迫は、避けられそうにもありません。
特にAI化やRPAの普及は、これらに滑車をかけ、会計事務所の業務を大きく変貌させていくことすら予想されます。
さらに中小企業にとって依然として厳しい経営環境が続く中、コロナの影響もあって、休業・廃業をする企業も増え続けています。
結果、税理士の数の増加と相まって税理士業界においてもすでに過当競争が繰り広げられているのが実情です。
これらの文言を通じて表面的に捉えるならば、確かに税理士の将来性についてはマイナス面ばかりでてきそうです。
税理士の将来性はマイナス部分だけではない
確かに税理士業界としては、上記のような厳しい状況が挙げられますが、他方で
- 税理士業界は高齢化に直面している
- お金や税金の問題は必ずついてまわる
- 税理士は顧客に寄り添える唯一のパートナーである
- AIによって税理士はさらに進化し得る
という点も、はっきりと指摘できるところです。
以下それぞれ解説していきます。
税理士業界は高齢化に直面している
税理士業界は現在高齢化が進んでいます。
その背景に、は若い人を中心とする税理士試験受験者の減少や税務署OB等の中高年世代の人数の多さがあります。
業界の高齢化は、業界全体の活性化にとっては好ましいとはいえず、特に先に挙げたAI化の影響が不利に働くことは避けられません。
こうした状況下では、当然のことながら世代交代が期待され、特に若い方の力がどうしても求められてきます。
言い換えると、過当競争などというのは、ある意味表面的な数字でしかなく、AI等のIT技術に精通した若い方には十分活躍する場があるといえます。
お金や税金の問題は必ずついてまわる
また少し考えてみればわかる通り、お金や税金の問題は、企業等に必ずついてまわります。
しかも、コンピュータやソフトがその判断等について100%自動的に処理してくれるわけでもありません。
税務上の判断については、確かに事例によっては直ちに処理できるものもありますが、
模範解答的なものが見つからず、総合的な観点から判断を要求されるものも少なくありません。
税務署等と折衝や交渉する場面も出てきます。
これらのことをAIがすべて行うことは非現実的です。
税理士は顧客に寄り添える唯一のパートナーである
更に強調しておきたいことがあります。
それは、顧客企業の経営者に心底寄り添えるのは、人間だけであり、AIには限界がある、ということ。
(特に中小零細企業の)経営者というのは想像以上にいわゆる‟孤独”なのです。
また、お金や税金は単に会社の業績等を表すだけでなく、その経営者という人間そのものを(感情的な側面をも含めて)映し出します。
やってみると分かりますが、他人の財布に触れるということは、その持ち主の人間臭い(泥臭い)部分に触れることを意味します。
必然的に、税理士は、理不尽かつ大変厳しい場面に出くわすことがあります。
他方(時には対立しながらも)孤独になりがちな経営者には寄り添うパートナーが必要です。
結果として人生相談や愚痴聞きといった場面すらもでてきます。
実は彼らは、会計事務所のルーティーン的な計算作業に対してはもとより、(税務署対策も含め)自分に寄り添ってくれていることそれ自体に報酬を払っている、という感が強いのです。
ですから往々にして、税理士としては、頭と心を使い行動することが求められるのです。
心身ともに大変な労力を費やします。
税務が厳しい、だけどやりがいがある、といわれるのはこういうことです。
他方、このような役割は、AIには期待できません。
こうしたことができる(経営者に寄り添える)のは税理士だけなのです。
そしてこれができる税理士は、これからも求め続けられると断言できます。
AIとの役割分担で税理士は更に進化する
税理士とAIとの関係で言えば、要するに役割分担です。
仕訳や計算処理等でのミスは信頼失墜につながる可能性があります。
他方、人間はミスを犯す存在です。絶対はあり得ません。
こうなると、これらのトラブルや事故を防ぐためにむしろAIを使わない手はない、ぐらいの発想がでてきてもおかしくはありません。
そうすることで、
仕訳や入力などの膨大なルーティーンワークはAI等に任せ、税理士は判断を要する税務や、より深い顧客対応に安心して専念できる、
こういうスタンスに達するのではないでしょうか。
次の税理士世代は、こうした新たな業務形態の担い手として活躍が期待されます。
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将来に向けて税理士が生き残るためにすべき事
以上より、税理士がそう簡単には無くならないことがお分かりいただけると思います。
ですがそれでも状況が厳しいことには変わりありません。
そこで、将来に向けて税理士が生き残るために積極的に実践していきたいことがあります。
ここでは、具体的に次の3点を挙げておきたいと思います。
- 得意分野を持つこと
- IT分野を習得すること
- 顧客とのコミュニケーションを大切にしていくこと
大切なポイントは、社会の変化に対応し、顧客のニーズに応えていくことです。
以下では、これらについて順次解説していきます。
得意分野を持つこと
税理士に限らないことですが、これからは得意分野を持つべき、ということがよくいわれます。
問題はその内容です。
どのような分野を得意にして、事務所の差別化につなげていくか、ということです。
そこでは、しばしば英語や国際税務が得意にすべき分野として挙げられるのですが、独立開業を念頭に置く限りあまり一般的とはいえません。
個人で対応するのが難しく、むしろ国際的な会計事務所が得意とする分野だからです。
むしろ我が国の少子高齢化社会の現実を鑑みますと、事業承継や資産税分野こそが経験しておきたい分野といえます。
中小企業や個人を顧客にしても扱うことが今後十分あり得るからです。
また、他にも資金繰り実務や経営計画策定、さらには自計化のためのIT技術の導入など、様々な分野が考えられます。
顧客サービスの向上とともに、事務所の差別化にもつながります。
いずれにしても、先ずは自身の先々の専門や特化すべき方向を明確にして(就職先の選定を含め)取り組んでいくのが望ましいといえます。
是非ご自身で興味のある分野に挑戦してみてください。
IT分野を習得する
上記の得意分野の一部と重なりますが、特に習得をおすすめしたいのがいわゆるIT技術分野です。
今日では、AIの台頭をはじめ、自計化の波は確実に押し寄せてきますし、税理士の年齢層等を見ても、この辺は手薄になりがちです。
他方、見方によっては、これはある意味チャンスですので、若い人は、是非IT関連分野を積極的に学んでみてください。
機会があれば、関連業界を経験してみるのもいいでしょう。
何も経理がらみとは限りません。プログラミングでもWebマーケティングでもいいのです。
興味のある分野があったら、是非1~2年でもいいので、その業界で経験を積んでみることをお勧めします。
何事も経験です。
こういった分野には通常、士業関係者は直接入り込まないので、想像以上に差別化ができます。(会社でも上にいけばいくほど疎くなっていきます。)
顧客とのコミュニケーションを大切にしていく
実務と並んで大切なのが、顧客との信頼関係を築くためのコミュニケーションです。
おわかりいただけると思いますが、この顧客との人間関係が結構大変だったりします。
特に、税務ではお金という非常にデリケートな部分を扱います。
しかも税理士という独立の立場で顧客に接するわけですから、色々と顧客と対峙する場面がでてきます。
すなわち、税理士で開業するとは、泥臭い人間関係にどっぷりつかることを意味するのです。
ですので、勤務時代から、(担当する顧客とのやり取りを通じて)コミュニケーション能力を磨いていってほしいと思います。
自分の顧客ではないのでモチベーションが上がらないという人もいると思いますが、せっかく勉強(経験)させてもらうのですから、自分の顧客のつもりで対応してみてください。
税務実務以上に収穫があるはずです(そのくらい人との関係は難しい!特に税務では)。
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税理士の将来性まとめ
様々な角度から税理士の将来性と魅力について検討してきましたが、いかがだったでしょうか。
確かに、税理士を取り巻く環境は競争激化やAI等の出現により厳し状況となってきています。
他方、税務の現場では、必ずといってよいほど(機械では処理しきれない)人間特有の難しい問題が数多く存在します。
ですが、これこそが税理士の存在意義の原点であり、税理士の将来性が否定されない所以です。
これから税理士を目指される方は、こうした点をしっかり認識していただき、税務の勉強とあわせて実務に励んでもらいたいと思います。
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