業界の過当競争、中小企業の減少、さらにはAIの台頭など、税理士を取り巻く環境は厳しくなってきています。
税理士が今後生き延びるためには、なんらかの差別化が必要と感じている人もいるでしょう。
そんな中で浮かぶのが、ダブルライセンス。
特に税理士は比較的、他の資格との相性が良いので、中にはどの資格を取ろうか迷う人もいるかもしれません。
そこでこの記事では、税理士とマッチするダブルライセンスBEST5を厳選して紹介していきます(注:今回は公認会計士資格は除きます)。
これらのダブルライセンスを通じて、皆様と顧客の両者のお役に立てれば幸いです。
なお、本記事は筆者の経験に基づく個人的見解であることをご了承ください。
・実務経験、通算20年以上
・独立までに大・中・小の3つの事務所に勤務(他に特許事務所経験あり)
・資格:税理士・公認会計士・弁理士
・独立後は会計・特許事務所を運営
記事の後半では、筆者が保有する税理士×弁理士についても経験談を載せていますので、
ダブルライセンスの醍醐味を知っていただけたらと思います。
税理士のダブルライセンスBEST5
相性の良い資格ランキング
まず結論として税理士と相性の良い(役に立つ)資格を、ランキング形式で示しておきます。
ランキング | 資格 | 相性度 |
---|---|---|
1位 | 社会保険労務士 | ★★★★★ |
2位 | 司法書士 | ★★★★☆ |
3位 | 中小企業診断士 | ★★★★☆ |
4位 | 行政書士 | ★★★☆☆ |
5位 | 不動産鑑定士 | ★★★~ |
1位は、ダントツで社会保険労務士です(社会保険などは、納付する側から見れば税と実質的に同じです)。
経理実務とも切り離すことができません。
次に法律や経営、さらに不動産関連と続いていきます。
こちらも中小企業や税金と密接不可分です。
別の見方をすれば、税理士は活躍フィールドが広い資格とも言えます。
そもそも、おカネ(会計)や税金はあらゆる個人・法人に関係していきますので。
ダブルライセンスの有益性は、自分の専門分野によって変わる!
上のランキング表を見て、もしかしたら、オヤッ?と思った人もいるかもしれません。
例えば中小企業診断士や不動産鑑定士です。
確かに、経営相談(コンサルティング)をやりたいと思っている人が、鑑定士資格を持っていても(顧客が不動産会社などである場合は別として)あまり役に立つとは思えません。
また逆に、相続税に特化して仕事をしたい人にとっては、診断士資格は不要でしょう。
つまり、自分の専門分野・得意分野を踏まえて資格を選ぶことで、税理士とのダブルライセンスは有益となるのです。
税理士と相性の良い、オススメ資格はこれ!
では、具体的に税理士とのダブルライセンスの中身を見ていきます。
ここでは試験難易度とともにオススメ度も示してみます。
注:相性が良いからと言って、それが万人にオススメになるわけではありません。
やはり資格である以上、(一部を除き)国家試験に合格する必要があります。時間やおカネがかかるのです。
また中には、業務によっては、ダブルライセンスの効果が限定されるものもあったりします。
社会保険労務士:★★★★★
試験(資格取得)難易度:やや難(合格率5~7%)
オススメ度:◎
会計事務所の一つの業務として挙がってくるのが給与計算です(筆者も給与計算ソフト「弥生給与」を使ってやっていました)。
しかも毎月の給与計算から年末調整まで、常に社会保険は付いて回ります。
結局、税金と社会保険を切り離して業務を行うのは、本来的には片手落ちと言わざるを得ません。
顧客側からしても、会計事務所と社労士事務所の両方に別々に依頼するのは、いろいろと大変かつ面倒になってきます。
そこで登場するのがこの資格です。
ワンストップサービスが可能となり、事務所の差別化の観点からも社労士資格はベストパートナーです!
やはり、給与計算をやっていて、社会保険のことがよくわからないのは不安なもの。
筆者も雇用保険や厚生年金などを結構勉強したものですが、さらなる体系的な勉強の必要性を痛感したものです。
なお、人事・労務を中心にコンサル業務をやりたい人も、もちろん👍です!
ただし、社労士試験は結構難関ですので、気合を入れて取り組む必要があります(合格率は5~7%で、年度により変動します)。
司法書士:★★★★☆
試験(資格取得)難易度:難(4~5%)
オススメ度:△~○
税理士と相性が良いもう一つの資格がコレ。
不動産等の登記が基本ですが、身近な街の法律家と言われるほど、法律についても司法試験並みに勉強します。
税理士をやっているとわかりますが、契約書のことから登記のことまで、顧客からいろいろと問い合わせが来たりします。
そんな時、「それは弁護士さんに聞いてください」とはなかなか言いづらいものです。
現実的には、実務本をあれこれ参照しながら調べたりするのですが、やはり資格があるのと無いのとでは、知識や信頼が全く違います。
社会保険労務士と同様、ワンストップサービスの観点からも大変有益です。
ただ、こっちの試験は社労士以上に難関です(合格率は4~5%)。
司法試験ほどではないものの、なかなか万人向けとは言えないでしょう(なので、司法書士の事務所と提携して業務を進めることが多いです)。
中小企業診断士:★★★★☆
試験(資格取得)難易度:普通(4~6%)
オススメ度:〇
中小企業向けの、コンサルタント資格がこの中小企業診断士です。
税務とセットで中小企業向けにコンサル業務をしたい方にピッタリと言えるでしょう。
また、直接コンサル業務をすることが無いにせよ、経営について体系的に勉強できるのもメリットです。
顧客企業は、税務・会計のために業務をしているのではなく、経営そのものをやっています。
なので、顧客経営者が抱える経営課題を理解するためにも、取得しておいて損はないでしょう。
税理士さんの中には、(税務は詳しいが)経営についてはあまり関心がない、という方が多い気がします。
なお、試験合格率は4~6%と結構難関です(こちらの資格の合格率も年度によって変動します)。
行政書士:★★★☆☆
試験(資格取得)難易度:税理士は無試験で登録できます
オススメ度:△~○
税理士なら無試験で取得することができます。
司法書士が法務局に対して手続きをするのに対して、行政書士は、文字どおり行政(お役所)に対して手続きをします。
また、内容的には、会社設立関連や飲食店・建設業の許認可申請など、幅広く業務を行います。
つまり、対行政機関を中心とする手続きの代行です(いわゆる代書屋さん)。
本当にいろいろな書類の作成を行っています。
こちらのメリットは何と言っても、事業者の設立時から関与していくこと。
顧客の確保を目的に登録される税理士さんも多いです。
不動産鑑定士:★★★~
試験(資格取得)難易度:難(短答合格率:32~36%、論文合格率:14~16%)
オススメ度:△~◎
税理士の専門分野によってオススメ度は大きく変わってきます。
具体的には、資産税を専門にする(特化する)方にオススメです。
もちろん不動産関連のコンサルティングにも大いに役立つはずです。
法人絡みでは事業承継に伴う自社株評価等で威力を発揮できるでしょう。
このようにメリットが大きい鑑定士資格ですが、資格取得が大変で、我が国の3大難関試験の一つ、などと位置付けられています。
とにかく試験が難しいうえ、実務修習が必要で、資格取得まで時間とコストがかかります。
資格の特徴としては、事務処理(実務)ばかりではなく、法律や理論を重視したアカデミックな側面があります。
その点、弁護士や公認会計士にとても似ています。
以上の点を踏まえますと、税理士としては、資産税に特化するつもりがなければ無理して取る必要はありません。
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成功の秘訣は、ワンストップサービスと資格の相乗効果
ダブルライセンスで重要なのは、顧客への便益があるかどうか、です。
中には、取得してもあまり役には立たず、単なる資格マニアで終わってしまう人も少なくありません。
そこでポイントとなるのが、特に
- ワンストップサービスの意義があるか
- 資格の相乗効果
という点です。
例えば、先の社会保険労務士や不動産鑑定士などをイメージしてもらえればわかりやすいと思います。
顧客は複数の事務所に依頼する手間が省ける一方、事務所側としても複数の業務の成果がバラバラにならず、結びついています。
言い換えれば、顧客ファーストの視点をもてるか、がポイントです。
逆に、(あまりいないと思いますが)社会保険労務士と不動産鑑定士のダブルライセンスって、どう思いますか?
相乗効果が期待できるでしょうか。
顧客も初めから「餅屋は餅屋」の姿勢で臨んでくるはずです。
例えば不動産評価に詳しい人が、相続税ではなく、「給与計算やりますよ」などと言ってきたら、顧客は「???」となるのが落ちです。
税理士×弁理士のダブルライセンスを経験してみて
ここでは筆者のダブルライセンス体験談(税理士×弁理士)について語ってみたいと思います。
実は、筆者が税理士と弁理士を兼業していた時、弁理士の先生方はもちろん、特許関係のクライアントも、税理士関連の業務には殆ど反応を示しませんでした。
確かに特許権の財産的価値などといった興味深いテーマも無くはなかったのですが、
正直に言うと、特許・知財を仕事のフィールドとした場合で、税理士資格が直接役立ったことはあまりありません(上で述べた「餅屋は餅屋」の話ですね)。
他方、税務・会計のフィールドでは、特許や知財に関連する問い合わせは結構すごいものがありました。
税務や会計は全ての事業体に関わってきますが、その税務や会計に携わっている人の中で、特許や知財に精通している人が殆どいなかったのです。
いわゆる完全なブルーオーシャンでした。
最先端のIT企業から街の中小企業まで、いろいろな相談が来たのを覚えています。
特許・知財関連はもちろんですが、それ以外にも、例えば
・外国弁理士への立替送金問題<源泉所得税・消費税絡み>(※)
・特許権の資産計上の可能性
などです。
※源泉所得税絡みでは、当時、国税当局と紛争状態に陥り、弁理士会や多くの特許事務所がこれに巻き込まれた。
当然ながら、そこから特許の仕事の依頼に結びついたケースもあります。
「ああ、それなら、ついでに特許も税務も一緒にやってよ!」といった具合でした。
税理士の活躍フィールドが広いため、そこで弁理士資格を役立てることができたのです。
結局、顧客のニーズとの関係で資格の位置づけや役割が定まっていった感じです。
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税理士と相性の良いダブルライセンスBEST5:まとめ
税理士と相性の合うダブルライセンスBEST5について紹介してきました。
簡単にまとめると
- 社会保険労務士
- 司法書士
- 中小企業診断士
- 行政書士
- 不動産鑑定士
です。
ご自身の中でピン!とくるものがありましたら、(中には取得が大変なものもありますが)ぜひ勉強、頑張ってみてください。
皆様の名刺の中に、これらの資格が刻まれる日が来るのを祈っています。
顧客のあなたを見る目がきっと変わるはずです。