財務会計論の勉強法【公認会計士試験・科目別攻略シリーズ】

財務データと拡大鏡

公認会計士試験で最初に勉強するのが財務会計論です。

この財務会計論は、公認会計士試験の中でもボリュームが多く、時間も結構かかります。
内容的にも難易度が高く、この段階で脱落する人も少なくありません。

他方、特に計算(簿記)がしっかりできるようになると、他の科目にもプラスに働いてきます。
つまり合否を最も大きく左右する科目であり、是非とも得意にすべき科目なのです。

そこでここでは、公認会計士試験の財務会計論の勉強法ついて解説していきます。

この記事の執筆者

・実務経験、通算20年以上
・独立までに大・中・小の3つの事務所に勤務(他に特許事務所経験あり)
・資格:公認会計士・税理士・弁理士
・独立後は会計・特許事務所を運営

目次

公認会計士試験・財務会計論の全体像

財務会計論では大きく分けて、計算と理論が出題されます。

内容的には前者は簿記、後者は財務諸表論です。

また比率は、計算が55%~60%で、残りが理論です。

実際の学習では、先に簿記で具体的な計算処理を学びつつ、ある程度慣れてきたところで、その裏付けである理論の勉強を始めていきます。

両者はもちろんリンクしているのですが、学習方法は同じではありません。
計算(簿記)では体で覚えていきますが(「簿記はスポーツ」などといわれる)、理論は頭を使うともいえます。

財務会計論の勉強法①:計算編(簿記)

電卓とペン

簿記ではアウトプット(計算練習)が勉強の中心となります。
テキストを熟読する以上に、手を動かしていくのです。

具体的な勉強のポイントは次の通り。

  • 計算パターンは決まっているので、体で完璧に覚える
  • 練習の際は、まずは同じ単元の問題を集中して解く
  • 毎日(1時間)継続的に答練を繰り返す
  • 誰もができるところを優先し、正答率の低いものや重要性の乏しいものに時間をかけない

財務会計の計算(簿記)は、ボリュームが多く、時間的にも厳しいものとなっています。

他方で、標準問題及びその解法のパターンは決まっています。

ですので、まずはその解き方やテクニックを完璧に体で覚えてしまいます。

具体的には(問題の内容を認識できたらノンストップで下書き用紙にT字勘定やボックス図、時系列の流れなどを書けるようにします。

その際は、その都度考えたりすることなく、条件反射的に解けるくらいに訓練すべきです。
出来た出来ない、の問題ではありません。

ですので、そうした練習は先ずは単元ごとに集中して取り組みます。
例えば退職給付会計なら、それに特化して徹底的に演習してみるのです。

注意したいのは、簿記は上達するのに時間がかかる一方、やらないでいると勘が鈍ることです。
なので、予備校で実施される答練等もフル活用して、日々繰り返し簿記に触れるようにしてください。

また、繰り返し答練の復習をするときは、問題用紙の端に解いた日付を記入しておくとよいでしょう。
こうして答練を3周していきます。

なお時間はタイトに設定しておくこと。
本番に臨む姿勢を日頃から身につけていくのです。

財務会計論の勉強法②:理論編(財務諸表論)

財務資料

財務諸表論では何を学ぶのか

上では財務会計論の計算分野(簿記)の勉強法について解説してきました。

これに対して理論(財務諸表論)では、会計処理の理由や背景について勉強します。

そこで中心テーマになるのが次の2点。

  • (純粋な)会計理論について:現金主義の考え方VS発生主義の考え方
  • 制度としての会計(会計のルール)について:会計基準とその国際的な統一への動き

1番目は会計理論の話です。

現金主義の考え方とは、要するに現預金の流れで経済取引や経済事象を把握していこうとするものです。
シンプルで客観的といえましょう。

でもこれだと、必ずしも経済的価値の動きは掴めないのです。
商品が売れて入金される前でも生産活動はしていますし、その間に人件費だって発生していきます。
退職金のコストにしても、元は就労していることに起因しています。

つまり、現金の出入りだけで見ていこうとしても、経済活動の動きは把握できないということです。

他方、今日では、投資家の役に立つような情報が求められています。
企業の収益力はどれほどか、どれほどのリスクがあるか、などの情報です。

そこで発生主義の考え方の出番です。
できるだけ、経済的な価値の動きを忠実に捉えていこうとするのです。

でも、これって客観的に把握することが難しくなってきます。
いくら理論的には考えられても、客観性に乏しければ、情報の信頼性が損なわれてしまい、投資に役立つどころではありません。

ですので

経済的な価値の動きを捉えつつ、かつ、いかに客観性を確保していくか

そのバランスをとったものの代表が、収益の認識基準である実現基準です(商品を引き渡した時点で収益を認識するという考え方)。

純粋な会計理論をテーマにするときは、こんなことを考えていきます。
見方によっては会計の発展の歴史みたいですね。

そしてもう一つのテーマ、それが会計基準(制度会計)です。
ここでは社会の約束事としての会計ルールについて検討します。

この会計基準は、現実的というか、結構、事情が複雑です。

我が国の会計基準は、かつては税法や会社法の影響を受けていたため、必ずしも会計理論に則したものとはなっていませんでした。

いわゆる会計ビッグバンを経てようやく会計的な理念を有するようになってきましたが、それでも課題は残ります。

それが国際的な調和への対応です。
コンバージェンスなどと言われていますが、世界の様々な会計基準を統一していこうという動きです。

そこでの理念は国際的な比較性の確保

要するに(各国ごとに)バラバラの会計基準で作った財務諸表では(互いに比較できず)グローバルな市場において投資意思決定に使いづらいのです。

こうした背景や動きを見ていきます。
今日の会計士試験でも、こうした動向を踏まえた出題がされています。

具体的な勉強の進め方

短答対策

財務諸表論の勉強法にいきます。

具体的なやり方は実にシンプル。

まず入門時ではとにかくテキストを読み込みます。

なかなか最初は抽象的でピンとこないものですが、
(監査論と異なり実務色はないので)テキストを繰り返すことで全体像が見えてくるようになります。

注意すべきは、テキストをノート等にまとめ直さないコト!(特に入門生にありがちです)
なんとなく勉強した気になるのですが、時間の無駄です。

また、テキスト熟読後(または並行して)短答対策の問題演習をしていきます。

過去問のほか、短答用の問題集を3周ほどしておくとよいでしょう。
問題集のアウトプットを通じて知識を定着させていくのです。

ここでは次の3冊の参考書を紹介しておきます。
特に最初の「早まくり条文別問題集」はほとんどMUSTといってよいほどの定番ものです。
注:ご購入の際は、最新版であることを必ずご確認ください。

🍀公認会計士試験 財務会計論 会計基準 早まくり条文別問題集

🍀ベーシック問題集 財務会計論 理論問題編

🍀アドバンスト問題集 財務会計論 理論問題編

論文対策

論文では知識の暗記とともに思考力も問われてきます。

確かに自分で答案を書いていく以上、定義や基本的な論点は覚えておく必要がありますが、

それだけでは不十分です。

覚えているものを答案用紙に単に吐き出すのではなく、問題に対して自分で考えてみるのです。

また、解説を通じて解答の根拠やプロセスをしっかり確認するようにしていきます(必要に応じてテキストに戻って確認します)。

ここで絶対にやってはいけないのは、(問題を自分で解かず)問題とセットで解答を丸暗記しようとすること。
理論科目でやりがちですが、これだと単なる論点主義的な勉強に陥りかねません。
少し角度を変えて問われると、途端に解答できなくなってしまいます。

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連結会計の勉強で注意したいこと<参考>

連結はとても重要です。それは単に受験のためだけではありません。
この分野を習得して実務にあたる時は「会計の専門家になるのだ」との実感が湧いてくるはずです。

他方で、この連結会計の学習は相当の歯ごたえがありそうです。
特に資本連結では、多くの受験生にとって一回で完璧に理解するのは厳しいといえるでしょう。

そこで先ずは連結の解き方(テクニカル的な側面)を中心に学習していきます。
具体的には、資本の部の動きをタイムテーブルに沿って把握し、これを連結仕分けに反映させていきます。

しかし、ここでぜひ注意しておきたいことがあります。

特に持分法(連結の学習の中盤から後半あたりにでてきます)の学習をしていると、

連結は得意なのだが、持分法は難しくて苦手だ」という受験生がでてきます。

もしこのように感じたら要注意!

当たり前のことを言うようですが、連結仕訳とは、

(個別財務諸表の)単純合算の数字を、本来あるべき連結上の数字に修正するための処理

のことをいいます(よって連結仕訳だけを眺めていても意味はありません)。

他方、持分法では(修正ではなく)ダイレクトに連結を反映させていきます(なので、持分法の仕訳こそ、本来の連結の考え方に近いと思われます)。

結局、単にタイムテーブルを追っかけて、あとは仕訳を覚えるだけ、のような学習を続けていると応用がきかなくなってしまいます。
例えば連結から持分法への移行(あるいはその逆)などの処理でつまづいてしまうのです。

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まとめ

公認会計士試験の財務会計論の勉強法について解説してきました。

簡単にまとめると次の通り。

  • 簿記分野はアウトプットを中心に体で覚えていく
  • 財務諸表論ではテキストの熟読とアウトプットを通じて暗記と思考の両方に努める

繰り返しになりますが、公認会計士試験の合否のカギを握っているのがこの財務会計論です。

勉強の最初に一番重い科目がきて大変だと思いますが、
受験勉強全体の行方を左右しますので、ぜひ十分時間をかけて取り組み、得意科目にしていただきたいと思います。

皆様の一日でも早い会計士合格を願っています。

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