公認会計士試験の管理会計論は、同じ会計学でも財務会計論とは勉強のやり方がかなり異なります。
例えば、簿記では愚直に練習すれば誰でも十分上達し得るのですが、管理会計論の計算はそうはいきません。
管理会計特有のセンスのようなものも問われてきます。
結果的に得意不得意が明確に分かれるとともに、それがそのまま会計士試験の合否に直結してしまう
それが管理会計論です。
そこで今回は、この管理会計論の勉強法について解説していきます。
・実務経験、通算20年以上
・独立までに大・中・小の3つの事務所に勤務(他に特許事務所経験あり)
・資格:公認会計士・税理士・弁理士
・独立後は会計・特許事務所を運営
公認会計士試験・管理会計論の全体像
まずは管理会計論の特徴を挙げておきます。
- 問題のボリュームが多い一方、時間が大変厳しい(時間不足になる)
- 難問、もしくは時間のかかる問題もあり得る
- 計算分野については、機械的なパターン学習が通用しない
とにかく試験問題の分量が多く、かつ難しい問題もあるため、全部解こうとすると時間不足となります(特に難問に引っかかると、あっという間に時間が経過して得点できなくなってしまう)。
なので、スピードもさることながら、解きやすい問題と、そうでない問題を峻別のうえ、できるものから片づけていく必要があります。
特に会計士試験では、誰もできない問題で差をつけるのではなく、誰もが得点するところを落とさないようにするのです。
また、計算分野では問題のバリエーションが無数に考えられるため、単なる機械的なパターン学習が通用しません。
実は、この点が簿記と大きく違うところ。
管理会計では、計算過程そのものが単に数字を出すためのテクニックではなく、会計上の意味があるからです。
この辺りをいかに意識していくか
管理会計特有の勉強スタンスが求められます。
管理会計論の勉強法①:分野別の基本方針
管理会計論には大きく分けて原価計算と管理会計(意思決定会計)の二つの分野があります。
前者は過去既に発生したコスト計算であり、財務諸表作成のための基礎資料として必要になってきます。
そのため、原価計算基準という制度(計算のルール)に基づいて計算処理を行います。
一方、後者の管理会計では、企業の将来にわたるコストやキャッシュフローの予想をしたりします(なので制度といったものに縛られません)。
そこでは企業の経営戦略的な色彩が濃くなるので、理論的な裏付けがより重要になってきます。
具体的には経営意思決定に役に立つ会計情報とはどんな情報か、という視点です。
なお、計算と理論の割合は、概ね6:4ぐらいで出題されます(ただし管理会計では、計算の割合が相対的に下がり、理論のウエイトが上がる傾向にあります)。
原価計算
ベースになるのは原価計算基準ですが、これを最初から読んでいても全く面白くありません。
それをやってしまうと、たぶん原価計算が嫌いになるでしょう。
なので入門時は、先ずは基本的な計算に触れていきます。
少し慣れてきたら、計算と理論(原価計算基準)をリンクさせていきましょう。
例えば、ボックス図や補助部門の配賦表がなぜ必要か、これらが何を意味するか、を原価計算基準と照らしながら確認していきます。
原価計算基準自体の学習についてですが、
(全ての丸暗記は不要なものの)最終的には重要な個所は覚えておくことをお勧めします。
原価計算基準の知識を前提に解答する設問も少なくないからです。
また、短答直前でまとめて覚えようとしてもなかなか難しいものです。
やはり日頃から計算とあわせて原価計算基準には馴染んでいった方がよさそうです。
そうすることで、どこに何が書いてあるかぐらいは反応できるようになりますし、直前期も慌てないで済みます。
管理会計論の計算練習について(補足):
管理会計論の計算練習は、簿記と異なり毎日コンスタントにやる必要はありません。
むしろ各分野ごとに集中してまとめ解きをするのが効果的です。
例えば個別原価計算なら個別原価計算だけをまとめて練習していきます(週2日、毎回2~3時間かけて集中して取り組みます)。
管理会計(意思決定会計)
勉強方法は原価計算と同じです。
計算と理論をリンクしてやりましょう、ということです。
ただし、管理会計(意思決定会計)では、理論のウエイトが高くなりますし、暗記的な要素も強くなってきます。
具体的な計算としては、主に
- 業務的(戦術的)意思決定
- 設備投資の経済性計算
が中心になってきます。
計算自体は数をこなせばできるようになってきますが、問題文が長くなると条件(税金や利息など)を落としがちになるので、集中力が大切です。
また理論では、こちらは制度や基準などはありませんので、理論を説明する用語をキーワードとして覚える作業がでてきます。
たとえば
- 予算編成・管理の意義
- 活動基準原価計算(ABC)
- 原価企画
など。
こういったものは、テキストとあわせて予備校の答練や問題集を活用していけば十分です。
管理会計論の勉強法②:問題への取り組み方
ここでは、問題への取り組み方について触れておきます。
大切なのは、漠然と問題文を読むのではなく、どのような計算手段をとれるかを考えながら(想定しながら)読むこと。
例えば、
どのような総合原価計算を使えばよいのか、配賦計算はどの様にするか、仕損品の処理の仕方は?
など
何も想定しないで読んでいると、迷路に迷い込んでしまいます。
極端ですが、解決手段(計算手段)は有限であり、あとは選ぶだけです。
つまり、必ず勉強した内容の、どれかに行き着くように問題はできています!
だからこそ、日頃から「なぜそういう計算をするのか(計算の目的)」を意識していくことが大切です。
とはいえ、これがなかなか難しい。
なので、一通り基本的な学習が終わったら、とにかく早い段階で本試験過去問にじっくり取り組んでみることをお勧めします(例えば論文試験の管理会計の問題では、経営の視点から管理会計の必要性を体感できます)。
早い段階で過去問とじっくり向き合うことで、その後の答練に対する受け方が変わってきますし、
単なる計算練習(集計練習)から脱却して、思考するレベルへと演習の深度を深めていくことができます。
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論文試験本番で特に大切なコト
結論は、白紙で出さないで、ということです。
例えば、もし仮に論文で
『諸外国の原価計算制度について述べなさい』
なんて問題が出たとします。
そこで
『諸外国の』という文字に目が行って、「そんなの知らん!誰もできないからここはパス!」となる人(要するにその設問は白紙にする人)もいるかもしれません。
それに対して
「『原価計算制度』という言葉があるじゃないか!よし、(日本の)原価計算基準について書けることをできるだけ書いてやろう!」と機転を利かした人
どちらが合格に近いでしょうか。
そういうことです。
たとえ『諸外国』とはいえ、そんなに異次元な基準があるとは思えません。
なので答案の最後で『諸外国にも似たような制度があると考えられる』などとしてやれば、受験生としての善管注意義務は果たせたのではないでしょうか。
誰もできない問題(サプライズ問題)に出くわすイコール白旗を挙げる、ではないことを、最後にお伝えしておきたいと思います。
まとめ
管理会計論の勉強法について解説してきました。
その中でも最も大切なことを一言でいえば、計算と理論との関連付けです。
日ごろから計算練習をする際、なぜそういう計算をするのか、を意識していくことです。
もちろん原価計算基準も決して侮れません。
また、それを普段の学習で実践できるようにするためにも、できるだけ早い時期に過去問に取り組んでみてください。
以上、参考にしていただけたらと思います。
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