この記事をご覧になっている方は、税理士の仕事や資格に関心があると思います。
他方で、税理士というと、おカネの計算をしたり税金の申告をしたりと、どちらかというと暗く閉じこもっているイメージが先行してしまうかもしれません。
でもそれは極めて表面的なもの。
確かに計算や申告書の作成といったワークは行いますが、
実はもっと奥が深く、一度やったらやめられない、という人がいるほどやりがいと魅力に満ちた職業です。
この記事を通じて、その素晴らしさを感じていただけたら幸いです。
・実務経験、通算20年以上
・独立までに大・中・小の3つの事務所に勤務(他に特許事務所経験あり)
・資格:税理士・公認会計士・弁理士
・学歴:早稲田大学理工学部中退・慶應義塾大学経済学部卒業
筆者が初めて体験した「税理士のやりがい」
最初に(少し恥ずかしいのですが)筆者が実際に初めて体験した「税理士のやりがい」についてお話ししたいと思います。
筆者が所属していた税理士会では毎年、確定申告の時期になると納税者向けに無料サポートを行うのですが、
その相談会に参加した時のことです。
結構大変で、会場に納税者の方々が次々と入ってくる中、限られた人数で手際よく処理していかなくてはなりません。
現場では税理士2人で組となり、4つの長椅子に囲まれ同時に7~8人に対応していました。
大半が年金生活者の還付、医療費控除絡みですが、一部には住宅ローン控除を受ける方もいます。
稀に「俺さぁ、年収2000万円超えちまったんだけど…」などという若い人もいたりしますが。
とにかく多くの方が限られた年金の中でギリギリやりくりしているのがわかります。
また持病持ちの方もおり、そういう方は大量の医療費関係の領収書を持参してきます。
中には、脳疾患等でペンが握れず、こちらが代筆せざるを得ない方も(しかも身寄りがなさそうで大変そうです)。
でもそれだけではありません。
お金や健康以外にも悩みが色々とあるようで、税理士に語りかけてくるのです(生活のことの他、親族を中心とする人間関係が多かった)。
ある意味で人生相談(愚痴聞き?)も兼ねていると言ってよいでしょう。
こうした公共の支援を忌避したがる先生もいるようです。
僅かな報酬(日当2万円ぐらいだったような)で朝から夕方まで事実上、拘束されますから。
他方で、筆者の場合は少し違いました。
(普段は損得を考えて行動する方なのですが)不思議と「やるぞ!」と、とても前向きになれたのを覚えています。
人に寄り添うとはどういうことか、公共の役に立つとはどのような感じか、(抽象的にではなく)現実的に体感できたからです。
報酬の多寡は関係ありません。
大変恥ずかしながら、監査業務ではそのような実感は殆どありませんでした。
監査では(会計士は)クライアントから煙たがられる存在です。
数千円ほどの還付に有難味を感じ、ホッとして会場を後にする納税者の方々。
一見すると当たり前の小さなことが、実はそうではないのが伝わってきます。
税理士になってよかった!と思える瞬間です。
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税理士のやりがい・魅力
クライアントから感謝される
一般的に、おカネは命の次に大切なもの、などと言われます。
この大切なおカネを(会計帳簿を通じて)扱いながら、クライアントの資産を守るのが税理士の主な仕事です。
また、国民には納税の義務があるのですが、クライアントがこれを適切に履行できるようにサポートするのも税理士の大事な使命です。
クライアントがどれほど税理士に信頼を置いているのかが分かりますね。
要するに自分の最も大切なものを任せるのです。
ですが、これらと並び重要な役割が税理士にはあります。
それは税理士は企業経営者にとってのビジネスパートナーであるということ。
企業活動は全て会計に行き着きますし、その業績は全て利益となって表れます。
会計や利益を扱ったり算定したりする税理士は、まさに企業経営者にとっては最後のよりどころともなるのです。
他方で、中小企業経営者は孤独になりがちである一方、常に何らかの懸案事項や悩みを抱えやすいもの。
そうした負担を少しでも解消できたりすれば、経営者にとってはこの上なくありがたいことなのです。
「この先生にお願いして本当に良かった!」
実は、まさにこの言葉こそ、税理士の最も大きなやりがいと言えるでしょう。
ましてや報酬となって返ってくれば格別です。
税の専門家として社会に貢献できる
社会貢献には大きく分けて次の2点があります。
- 個々のクライアントの役に立てる
- 国を支える(公共性)
前者は上で述べた通りです。
企業経営者等のパートナーとして貢献し得るということです。
でももう一つ重要な点があります。それが後者です。
税金を納めたくて納めている人は殆どいません。
納税者側からすれば、少なければ少ないほど喜ばれるでしょう(可能ならゼロにしたいと思っているはずです)。
ですが、皆が納税をしなくなってしまえば社会は機能しませんよね。
法律だってそんなことは許容しません。
そこで、税理士としては、クライアントに完全にベッタリになるのではなく、公正中立な立場でクライアントを指導していきます。
例えば脱税まがいの税務処理に対してはNOを明示することも必要ということです。
これが結局はクライアントのためにもなるのですから。
こうして、クライアントをサポートしつつ国の台所を縁の下で支えていくのです。
高収入が期待できる
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、税理士の平均年収は約958万円となっています。
この数字は通常のサラリーマンの年収に比べ格段に高いことが窺えます。
専門家(プロフェッショナル)である税理士は、その仕事ぶりや能力によって非常に高い収入が期待できるということです。
難関国家試験の合格に十分見合うものともいえるでしょう。
また、税理士についていえるのは、勤務形態や年収を自身で決めていけることもやりがい・魅力の一つです。
例えば自分の実務経験や能力で更なるキャリアアップは可能ですし、独立も士業の中では最もハードルが低いといえます。
特に開業税理士の年収には上限はありませんし、なにより自分でクライアントに対して報酬額を決め、請求書を切っていけます。
一見当たり前のように思えますが、これって本当にスゴイことなのです。
しかも、この報酬が、先で述べた感謝の表れとして得られるのであれば、これに勝る喜びはありません。
多様な働き方ができる
近年では、ワークライフバランスが盛んに主張されるようになってきました。
多様な価値観やライフスタイルを反映して、自分に合った様々な働き方が推奨されています。
他方、一つの会社に終身勤務するとなると、こうした働くスタイルは(昨今では以前に比べ弾力的になってきているとはいえ)現実的にはなかなか難しかったりするものです。
その点、税理士は本当に働き方を広く選択できると言えるでしょう。
税理士の専門性は高い一方、おカネの事はどこへ行っても必ずついて回るものです。
この職業が無くなることは現実的には考えられません。
なので、例えばガッツリ稼ぎたい人は、独立して事務所を大きくしたり、大手税理士法人でパートナーを目指したりできるでしょう。
また、先のワークライフバランスを目指すのであれば、(非常勤を含め)それに見合った事務所に転職したり、自分の身の丈に合った事務所運営をしたりすることも可能です。
今日では、一般的なサラリーマンも、多様な働き方ができる方向に動いていますが、
収入の安定性まで考えると、やはり税理士には圧倒的な強みがあります。
人脈が広がる
税理士というと、冒頭で述べた通り、閉じこもってデスクワークをしているというイメージがあるかもしれません。
それは、半分正解ですが、半分は間違いです。
確かに帳簿や申告書を作成したりする事務作業はありますし、様々な事案に応じて調べたり検討したりする時間は少なくありません。
ですが、これほど人とのコミュニケーションを伴う仕事も珍しいと言えるでしょう。
なぜなら、常にクライアントの存在が前提となっているからです。
様々な問い合わせから、決算データの確認、税額の報告、さらには経営についての助言等、常に双方向的に連絡を取り合っています。
また、会計事務所では通常様々な業種のクライアントを担当するのが通常ですし、
昨今では異なる士業や業界の専門家の人たちと交流することも盛んになっています。
こうした交流には、顧客の開拓につながるほか、何かわからないことがあったら互いに助け合ったり等、多くのメリットが存在します。
もちろん仕事を超えた、自身の視野というものをも広げることができるでしょう。
特に税理士は、仕事のつぶしがきくこともあり、あらゆる人たちとコンタクトする機会を持ちうるのです。
結論として
社会に寄与することができるとともに豊かな職業人生が送れる
これこそが税理士のやりがいであり、魅力に他なりません。
税理士にも厳しい側面がある
これまでは、税理士のやりがい・魅力をお伝えしてきましたが、もちろんウマい話ばかりではありません。
むしろ光の部分が強ければ強いほど、影の部分も濃くなるというもの。
そこでここでは、皆様の、税理士を目指す決意を確認する意味も含めて
敢えて厳しい面やマイナス面についても簡単に触れておこうと思います。
いくつか挙げるとすると、次のような感じです。
- クライアントのおカネに対する見方は大変シビアである
- ミスの許されないプレッシャーにさらされる
- 決算・申告時期を中心に繁忙期は体力的にキツイ
- 今日では、そう簡単には顧問先の開拓はできない
- 税理士試験は長丁場で、かつ難関である
ちょっと怯む人もいるかもしれませんが、どれも現実です。
どれも大変ですが、筆者が特に厳しいな、と感じるのが最初の項目。
やはり、クライアントとの関係には(どの業種でもそうですが)苦労させられます。
こちらの思った通りに反応する(あるいは相性の合う)クライアントばかりとは限らないからです。
例えば
- 過度な要求をしてくる人(例:不当な節税を求めたりや専門外のことを聞いてくる)
- 書類の準備に協力的でない顧客(例:期限ギリギリに資料を提出してくる)
- 自分(だけ)の論理や理屈を持ち出したり、それ叶わないと感情的になる社長(例:昨年より税金が高くなってくると何かしら物言いをしていく可能性あり)
挙げたらきりがないですね。
想像以上に、心身共にこの仕事はハードです。
他者のおカネを預かるとはそういうことなのです。
結果として、仕事が大変で、試験勉強まで手が回らず、いつまでたっても試験に合格できない(3科目どまりとか、法人税だけ何年やっても受からない、など)ことが起こり得ます。
税理士のやりがい・魅力を高めるには
税理士のやりがい・魅力は上で述べた通りです。
繰り返しになりますが、特にクライアントから感謝されることは格別です。
仕事に充実を感じている税理士の誰もが、例外なく口にします。
他方、もちろんクライアントを巡っては、様々な問題やトラブルが起こり得ます。
本当におカネというもののコワさ、泥臭さを思い知らされるでしょう。
対応を誤ると、最悪、クライアントの怒りを買って契約を切られる、なんてことも…
ですが、怒りではなく、感謝で報われる確実な方法が一つだけあります。
それは(月並みに思われますが)
常日頃から誠意をもってクライアント(の経営者)に寄り添うこと。
そうすることで信頼を地道に築いていくのです。
本当にコツコツとした地味な積み上げです。
どうしても日々の膨大な作業やルーティーンワーク的側面から、自分の目線や気持ちが目先の事務作業に行きがちです。
ですが、目線が書類ではなく、クライアントに向いているか否かで全く違ってきます。
例えば、忙しい時の顧客からの電話応対などをイメージしてみるとよいでしょう。
こういうところで、日頃から丁寧かつ真摯にクライアントと向き合っていれば、相手にも伝わるものです。
信頼が得られていれば、
仮にクライアント側に(税務上の)問題があったとしても、それを正す意味での指導は前向きに受け止めてもらえるはずです。
逆に、ここで、クライアントから反発されるようなら、まだ自身の誠意が足りず、信頼関係が十分構築されていない可能性があります。
顧客の反応は、まさにあなたの日頃の仕事ぶりを映し出しているのです。
まずは転職エージェントにご相談を
税理士は、やりがいや魅力のある職業ですが、就職先の会計事務所の選び方については注意したいものです(注:税理士資格を得るためには、試験合格とは別に2年以上の実務経験が必要です)。
何事も最初が肝心で、どのような事務所で実務をスタートさせたかによって、その後の職業会計人としての人生が大きく変わってきます。
特に、ブラック事務所などにハマってしまってしまっては元も子もありません!
そこで不可欠なのが、プロの転職エージェントの活用です。
ここでは、税理士・会計事務所に強いエージェントを紹介しておきます。
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また、エージェントとしての専門性が高い一方、若さも備えているため、気軽に相談等しやすいことも魅力的と言えるでしょう。
なお、他社についても優良エージェントなので、併せての利用も一考です。
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最後に
税理士のやりがいと魅力についてお伝えしてきました。
結論としては、税理士は厳しい側面がある一方、その分の見返りは決して少なくない、といったところでしょうか。
この点をプラスにもっていけるか、厳しい側面だけが強く残ってしまうかは、個々人の適性の問題もあったりします。
また、どの会計事務所に就職するかも大切なポイントになってきます。
ぜひ自分に合った事務所で実務を経験しながら、税理士のやりがい・魅力というものを存分に体感してもらえたらと思います。
皆様のご発展とご活躍を祈っています。
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