弁理士試験の難易度は非常に高く、最終合格率は10%以下となっています。
特に近年は合格者数も全体的に減少傾向にあり、弁理士志望の人にとっては厳しい要因ばかりが目に付くでしょう。
ですがよく見ると、難易度を示す各種データが実は色々と教えてくれています。
本気で弁理士になりたい人にとって、これを見逃すのは実にもったいない!
そこでこの記事では、弁理士試験の難易度を徹底検証することで、合格の秘訣を探っていきます。
また、あわせて弁理士の難易度ランキングも紹介していきますので、参考にしてみてください。
略歴:特許事務所→公認会計士・監査法人→特許業界復帰→弁理士→独立(特許事務所・会計事務所経営)
特許事務所を営む父親の長男に生まれる。
その関係もあって学生の頃から特許業務に従事。
ところがある日、急にビジネスの広い世界を知りたくなり、公認会計士業界に飛び込む。
父親の健康事情及び自身の適性を考慮して特許業界に復帰、その後、事務所を承継。
資格:弁理士・公認会計士・税理士
弁理士試験の難易度をデータで確認する
先ずは合格状況の推移を見てみます。
令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
---|---|---|---|---|---|
受験者数 | 3,488 | 2,947 | 3,248 | 3,177 | 3,065 |
合格者数 | 284 | 287 | 199 | 193 | 188 |
最終合格率 | 8.1 | 9.7 | 6.1 | 6.1 | 6.1 |
受験回数 | 4.1 | 4.1 | 3.7 | 3.4 | 2.8 |
合格者平均年齢 | 37.8 | 37.9 | 36.9 | 34.9 | 34.3 |
全体的な難易度としては、合格率が10%以下、受験回数も3~4回となっており、かなりの難関であることが分かります(必要な勉強時間は3000時間以上などともいわれている)。
また、年度によって合格者数や合格率に変動が見られることも近年の特徴といえます。
特に平成21年から平成25年までは、いわゆる弁理士バブル的な合格状況を呈していましたが、同26年からは一転して合格者数が抑制されています(令和3年度は更に減少し、最終合格者数が200名を切りました)。
弁理士試験の難易度が高い理由
- 勉強量や暗記量が膨大で試験問題も難しい
- 忙しい社会人が主な受験者層
- 試験勉強と実務は別物
- 受験者層のレベルが非常に高い(トップレベルの大学出身者が多い)
- 合格率が10%以下(特に近年は難化傾向にあり)
この中でも特筆すべきは、企業や特許事務所等に勤めている社会人が主な受験者層である一方、高度な実務が受験勉強にあまり役立たないことです。
また受験者層のレベルの高さも無視できません。
出身大学についても、毎年のように東大、京大等のトップ校が合格者数の上位校に挙がってきます(参考:特許庁・令和5年度弁理士試験統計)。
結果として、人によっては受験勉強が長期化してしまいます。
弁理士試験の段階別の難易度
短答試験
- 合格率:10~20%
- 「正しいものはいくつあるか」と問うてくるものが多い(消去法が通用しない)
- 各分野で40%以上取らないと足切りに合うこともある
短答試験では膨大な知識を覚えなければならず、しかも設問が結構トリッキーで、ひっかけ問題も少なくありません。
そこでは特許法等の法律の理解はもちろんですが、スピード感をもってテクニカル的に処理していく訓練も不可欠です。
なお、試験当日の夜に各予備校が解答を発表するのですが、問題によっては解答が予備校間で異なったりします(いわゆる割れ問です)。
論文試験
弁理士試験の最大の山場です。
難易度についての特徴は次の通り。
- 合格率:25~30%
- 短答試験をクリアした者同士の競争である
- 試験問題が難しく、分量も多い(特に特許)
- 各必須科目のうち47点未満があると足切りとなる
さらに付け加えると、短答試験免除者が必ずしも有利になるとは限りません。
短答的な知識が必要な設問もありますし、短答的な瞬発力も求められます。
したがって実質的には短答論文総合試験と言った方がよいでしょう。
アウトプットの訓練(答練や模試)は必須です。
口述試験
- 合格率:90%以上(年度により変動アリ)
- 担当試験委員や試験問題により合否が左右され得る
口頭で試されるというのは、慣れてないと結構大変です。
私も一応準備はしましたが、筆記試験以上にキツク感じました(本番では幸運にも試験問題と試験委員に恵まれましたが)。
しかも、一時期ほどではないですが、年度によって合格率に多少の変動があります(令和5年度は94.3%でした)。
特に合格率が低いときは、試験問題や試験委員等、運不運に左右されがちです。
委員によっては助け船をバンバン出して救おうとする人もいれば、全くその気のなさそうな人もいます。
弁理士試験の難易度を巡る二つの疑問
試験が難しくなるほど早く受かる?
弁理士試験は以前と比べ難化傾向にありますが、
試験が難しくなると受験回数が増えたり年齢が上がると考えるかもしれません。
ところが、データによれば受験回数にそれほど影響はなく、むしろ近年では受験回数や年齢は逆の傾向すら見られます(受験回数は減少し、年齢も僅かだが若返っている)。
そこで参考までに、合格率に大きく変動のあった年度を別に抽出してみました。
平成25年度 | 平成26年度 | |
---|---|---|
合格者 | 715 | 385 |
合格率 | 10.5 | 6.9 |
受験回数 | 4.8 | 3.9 |
平均年齢 | 38.9 | 36.4 |
合格者数が大きく抑制に向かう頃の年度です。
合格者数は半分近くまで激減するとともに、合格率も下がっています。
他方で、受験回数は1回近く減ってます(年齢も若返っている)。
もう一つサンプルを見てみます。
やや古いものですが、逆に弁理士バブルの始まりの頃です。
平成20年度 | 平成21年度 | |
---|---|---|
合格者 | 574 | 813 |
合格率 | 5.9 | 8.5 |
受験回数 | 3.1 | 4.1 |
平均年齢 | 34.1 | 36.1 |
平成21年度は合格者数、合格率ともに上昇していますが、
今度は、受験回数は1回増えています(と言うことは、勉強期間が1年延びる)。
結局、合格率が上がると(受かりやすくなると)、ベテラン受験生(受験勉強が長引いている人たち)の努力がようやく報われ、そのことが受験回数や年齢に表れてくる、と推測できます。
ということは、裏を返して言えば、合格率が下がる(難化する)と受験が長引いている人は受かりにくくなり、代わって比較的受験期間の短い人が受かりやすい、とも言えそうです。
勉強時間が取れるほど合格は遠のく?
更に統計データを色々と分析してみると、また別に興味深いものが見えてきます。
その一例が次の職業別の合格率です(注:合格率の算定の際の分母は実際の受験者数ではなく、志願者数を用いています)。
特許事務所 | 会社員 | 学生 | 無職 | |
---|---|---|---|---|
志願者数 | 738 | 1,722 | 131 | 342 |
合格者数 | 63 | 92 | 4 | 11 |
合格率 | 8.5 | 5.3 | 3.1 | 3.2 |
データを見ると、仕事をしながらの合格率の方が、学生・無職組(勉強に専念しやすい人達)のそれより僅かですが高くなっています。
特に特許事務所と学生・無職を比較するとそれは顕著です。
特許事務所が会社員より合格率が高いのは、事務所は通常、受験勉強に対して配慮してくれるから、と言えます。
勉強しやすい環境と言えるでしょう。
ところが、時間を十分確保しやすいはずの無職や学生の合格率は、相対的に低くなっているのです。
弁理士の難易度でわかる合格の秘訣とは
本気で受かりたければ短期決戦!~受験の長期化は弊害でしかない~
長く勉強すればそれだけ学力が上がる、そんなことを考えている人はいませんか。
ですがそれは違います。
結論的には(個人差ありますが)受験勉強において学力のピークが来るのは3年目、もしくは受験3回まで、と考えてよいでしょう(その意味で各国家試験に見られる三振制度はそれなりに意味があるといえます)。
ところが、弁理士試験では社会人受験生が大半です。
しかも多くの方が仕事を優先させるため、この3年(3回)のタイミングを逃してしまいます。
言い換えれば、受験勉強に対して頭をフル稼働できず、勉強(それも最初の基礎)が中途半端になってしまうのです。
ですので、特に実務(特に明細書作成実務)と受験勉強を同時に始められる方は要注意!
受験勉強の長期化は、先のデータの通り、弊害でしかありません。
短時間集中も大切
高校受験や大学受験の頃を思い出してほしいのですが、部活動をこなしながらトップクラスの学校へ進学する人っていますよね。
文武両道っていうやつです。
他方、外観的には勉強しているように見えても、成果に結びつかない残念な人もいます。
一見机に向ってはいるけれど、中身が伴っていなかったり、集中できなかったりします(中には単なる参考書マニアも)。
弁理士試験も受験である以上、一発勝負です。
しかも一瞬のうちに試験時間は過ぎていきます。
具体的には、短答、論文ともに、短時間の間に膨大な情報処理をしていかなくてはなりません。
それも正確な理解、正確な知識、そして正確かつ迅速な処理が求められるのです。
そこでは、何時間勉強したかは結果であって、実質的には勉強1時間ごとの集中度が試されます。
今から思い返してみると、仕事をしながらの環境では、嫌でもそんな学習習慣が身につきます。
対して、時間が有り余っている無職の受験生では難しいかもしれません。
ですので(凡人が受けりたければ)短期決戦&短時間集中で取り組んだ方がよい、というのが筆者の意見です。
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弁理士試験の難易度ランキング
この種の難易度ランキングには注意が必要です。
それぞれの試験内容・構成、合格率、受験者層、受験要件等がバラバラで比べようがないのです。
例えば、医師国家試験(合格率約90%)と弁理士試験を比べて、医者になるのは弁理士より9倍やさしい、などとはいえないでしょう。
ですが、ランキングについて気になる人もいるようなので、
ここでは他のサイト等も参考にしつつ、思いつくままにザっと書いてみます。
偏差値 | 資格・試験 |
---|---|
77 | (旧)司法試験 |
75 | 国立大医学部 東京大学 |
74 | 司法試験 京都大学 (旧)弁理士試験 |
72 | 国家公務員総合職 |
71 | 弁理士 公認会計士 私立大医学部 |
68 | 司法書士 不動産鑑定士 早慶 |
66 | 税理士 |
65 | 一級建築士 国立大歯学部 |
64 | 社会保険労務士 中小企業診断士 |
62 | 行政書士 |
こんなとこでいかがですか
ちなみに弁理士資格を特別扱いしているわけではありません。
むしろ、他のサイト等を拝見していて、意外なほど弁理士の評価が低いのに驚いています。
まとめ
弁理士試験は合格率が低く、各段階ごとの試験内容もハイレベルなものになっています。
受験者層や勉強できる時間も考慮すると、大変な難易度と言えるでしょう。
他方で、合格状況に関するデータをよくよく調べてみると、ほかにも大切な点が見えてきます。
結論としては、短期決戦と短時間集中で取組む、ということです。
実は、職業を問わずいずれかが盲点となりがちです(と言うより”受験の罠”ですね)。
言い換えれば、この罠にハマらないようにすれば、成功はグッと近づくのではないでしょうか。
ぜひ参考にしていただけたらと思います。
最後になりましたが、弁理士試験受験生の皆様には1日も早い合格を祈っています。
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