公認会計士を目指したいけど年齢が気になる人は多いと思います。
例えば次のような疑問や懸念もあるでしょう。
- 会計士試験に合格できるのは何歳まで?
- 30代だが、できれば大手監査法人にいきたい
- 会計士なら何歳でも転職できるの?
- 独立開業にも年齢の壁ってある?
年齢は各人の属性ですが、こうした年齢に関係する疑問は、会計士試験の勉強とは別に大きな懸念材料として重くのしかかってきます。
そこでこの記事では、合格者の年齢実態を確認した上で、何歳までなら就職、転職、さらには独立ができるかについて解説していきます。
略歴:特許事務所→公認会計士・監査法人(パート含め3社)→弁理士→独立(会計事務所・特許事務所経営)
複数の士業(公認会計士・税理士・弁理士)を通じて様々な事務所・実務に携わる
監査法人・会計士事務所には通算、約10年勤務(パート含む)
特に現場では20代から50代まで幅広い年齢層と仕事をした経験あり
公認会計士を目指せる年齢①:何歳までなら試験に合格できる?
公認会計士の合格者の年齢実態
先ずは「令和5年公認会計士試験合格者調」を見てみます(出典:公認会計士・監査審査会)。
合格者は、20代が全体の80%以上を占めています。
それに次いで30代が約10%、また40代が約1.6%となっています。
50代以上はさらに少なく、かろうじてゼロではない、という状況です。
結論として、合格者のほとんどが20代の若い世代で、30代後半になると急激に減少していくのが分かります。
監査法人等への就業状況も、ほぼこの数字を反映したものとなります。
年齢層は完全に横一列というわけではないものの、やはり20代が中心であることに変わりありません(特に大手監査法人の就職状況)。
年齢が高くになると、論文が厳しい!
年齢と試験合格との関係について、特に注意したい事がありますので、それを記しておきます。
それは、短答合格率と論文合格率の年齢区分ごとの推移です。
後者は上記の表の「合格率(C)/(B)」でわかりますが、短答の合格率は直接的には出ていません。
そこで論文受験者を短答合格者とみなして(B)/(A)を計算することで、この短答合格率を便宜的に算定してみます(次の表の真ん中です)。
年代区分 | 短答試験合格率 | 論文試験合格率 |
---|---|---|
20歳未満 | 9.4% | 63.9% |
20代前半 | 20.4 | 49.3 |
20代後半 | 22.4 | 33.6 |
30代前半 | 20.3 | 26.8 |
30代後半 | 21.5 | 14.1 |
40代前半 | 19.8 | 12.6 |
40代後半 | 18.2 | 5.7 |
50代前半 | 22.7 | 3.2 |
50代後半 | 16.5 | 0.0 |
60代前半 | 24.3 | 4.0 |
60代後半以上 | 19.7 | 0.0 |
全体 | 20.6 | 36.8 |
会計士試験は、一般的に短答が難しく、論文は比較的受かりやすいイメージがあります(全体の数字も論文の方が高く、学生を中心とする20代前半に限ると、2人に1人弱が受かる感じです)。
ところが、短答では40代以上でもそれなりに結果を出している一方、論文では30代後半から急激に減少します。
つまり短答試験では年齢が不利に働くことは殆どないということです。
他方で、年齢が高めの人が気をつけるべきは、むしろ論文試験ということになります。
そこで注意すべきが次の3点。
- 論文では定義や基準、キーワード等の正確な暗記が求められる
- 論文の答練や模試をしっかり受ける
- 直前期のスケジューリングと最後の詰めをしっかりする
論文では全て自分で一定レベル以上の解答を再現していかなくてはなりません。
そこで求められるのが、用語等の正確な暗記。
実は計算以上にこの暗記が年齢とともにキツクなってきますし、忘れるのも早いです。
また、仕事が忙しくてもアウトプット、つまり本番に向けた実戦訓練が必須です。
ここが論文合格のための勉強の核心と言ってもよいでしょう。
最後は、論文試験直前の勉強の仕上げをしっかりすること。
どれだけ暗記を完璧にしたかも問われます。
公認会計士を目指せる年齢②:何歳までなら就職できる?
就職の可否を巡る年齢の目安
試験に合格したら、今度は監査法人等への就職です。
試験は各人だけの問題ですが、就職となると相手(採用側)がいます。
また、当然ながら、大手事務所を中心に若さが求められます(特に未経験者)。
そこで気になるのが年齢と就職状況の関係。
年代別にザックリ見ていきます(注:基準は監査法人3社に勤務したことのある筆者の経験に基づきます)。
年齢層 | 大手監査法人 | 中小法人・個人事務所 |
---|---|---|
20代 | ◎ | ◎ |
30代(職歴なし) | △~× | ○~△ |
30代(職歴あり) | ○ | ◎ |
40代(職歴あり) | △ | ○~△ |
50代以上(職歴あり) | × | △~× |
◎:基本的に問題なし ○:十分可能性あり △:不透明(その人次第) ×:事実上不可能(ただし絶対ではない)
いくつかポイントを挙げるとすると、ひとつ目が年代です。
20代と30代、そして30代と40代とではそれぞれ状況が変わってきます。
20代ですと(就職難を除き)大手を含め就職に困ることはありません。
他方、30代以降になるとシビアになってきます。
さらに2つ目のポイントです。
30歳を過ぎると、それなりの職歴が求められるということです。
40代になると、それが顕著で30代よりもハードルは一挙に上がります。
単に職歴があるだけでは足りず、相当のキャリアが求められてくるのです。
例えば、金融機関等で専門性の高い仕事をしてきた、とか、海外ビジネスの経験が豊富で英語が堪能である、などです。
注意:大手監査法人と中小法人・個人事務所とでは、年齢面について多少の温度差があります。
特に中小法人や個人事務所は、比較的少人数であることから、年齢よりも人柄重視のところが少なくありません。
また、上記の目安は雇用状況が良好なことを前提としています。
これが悪化して就職難になると、一転して厳しくなってしまいます。
例えば、卓越したバックグラウンドがあれば、40歳ぐらいまでは可能性がありますが、
そうでなければ現役合格者(大学生)が優先されがちです。
年齢ごとの具体的なケース
ここでは筆者が知っているケースを具体的に取り上げてみます(30代以上とします)。
Nさん(合格時、30代前半):一般企業→予備校講師→大手監査法人
就職難ということもあって一時は苦労されたようでしたが、予備校講師をしつつ時期をみて大手監査法人へ転職されました(前職は会計・財務とは無関係)。
その後、最速でパートナー就任。
コミュニケーション能力に優れ、年齢を問わず多くの人に親しまれていたのが印象的でした。
Hさん(合格時、40代前半):公官庁→大手監査法人
公官庁在職中に海外の大学に留学されています。
年齢は40歳を過ぎていましたが、海外経験が豊富なことや語学が堪能なことも評価されたとのこと。
大企業や公官庁から海外留学に派遣される方は、大変優秀であることのお墨付きが得られているのです。
Tさん(合格時、50代):経歴不詳→独立開業
筆者が補修所に通っていた頃、一緒に補修を受けていた方です。当時の合格者の中では最年長にあたります。
経歴についての詳細は分からないのですが、3年後には見事に公認会計士登録をされました。
その後、直ちに独立される一方、会計士協会の会務などに積極的に参加されるなど、とにかく熱意が凄かったのを覚えています。
🍀年齢と就職についての全体的な印象:
全体的に見てやはり、年齢が上がるほど就職は厳しくなる、というのが正直なところです(特に大手監査法人)。
では、年齢が高ければ無理なのかと問われると、40代まではなんとかなり得る、といったところです。
ただしどういった就職先を狙うかによっても状況は変わってきます。
より具体的に言うと、大手監査法人を目指すのか否か、という点です。
言い換えれば、大手でなければ選択肢は結構広がる、というのが筆者の感覚です。
公認会計士を目指せる年齢③:就活のポイント
ここでは年齢ごとの就活のポイントを確認しておきます。
まず全ての年齢に共通するポイントから。
- 実務要件を満たせるか確認する
- 将来に向けてのキャリアを早い時期に明確にする
公認会計士になるには3年以上の実務経験が必要です。
また、自分が将来的にどういう方向で行きたいのか(監査法人のパートナーを目指すのか、企業のCFOを目指すのか、はたまた税務で独立したいのか、など)を早めに明確にすべきです。
先々の転職や独立のタイミング等にも関係してくるからです。
次は年齢ごとのポイント・注意点です。
年齢層 | ポイント・注意点 |
---|---|
20代 | ・コミュニケーションが酷いと不採用になることもあり得る |
30代 | ・職歴や自分の強みを上手くアピールする ・先々のキャリアパスを明確にしておく ・転職エージェントの活用 |
40代 | ・基本的には30代と同じだが、これまでのキャリアと就職先のつながりが成否のカギを握る |
50代以上 | ・会計士試験に挑戦すること自体、慎重に(ただし100%不可能というわけではない) |
留意しておきたいのは、就活の成否はリクルート対策の有無によっても変わってくるということ(ESの書き方や面接対策の有無など)。
こうした対策は会計士試験とは異なり、その気になれば誰でもできることなので、しっかり準備していきたいものです。
そこで忘れてはいけないのが転職エージェントの活用です。
ここでは特に会計士の転職に強いエージェントを紹介しておきます。
※各エージェントのプロモーションを含みます。
マイナビ会計士 | MS-Japan | レックスアドバイザーズ | ジャスネットキャリア | |
得意分野 | 公認会計士 | 管理部門 士業 | 公認会計士 税理士 | 公認会計士 税理士 |
主な年齢層 | 20代・30代 | 20代~50代 | 20代~40代 | 20代・30代 |
設立(歴史) | 1973年 | 1990年 | 2002年 | 1996年 |
20代・30代の方でしたらマイナビ会計士やジャスネットキャリアが、40代以上の方でしたらMS-Japanやレックスアドバイザーズがオススメです。
大手監査法人以外の就職先について
諸事情で年齢が比較的高めの方もいらっしゃると思います。
また、合格した時は就職難だった、などということも今後はあるかもしれません。
そこでここでは、大手監査法人以外の就職先について解説します。
まず気を付けたいのが、最終的な資格要件である、実務経験を満たすこと。
監査実務以外でも可能ではあるのですが、できれば会計士業務に関係するところがよいでしょう。
例えば次のような選択肢です。
- 中小監査法人
- 個人の公認会計士事務所
合格者を求人しているのであれば、個人事務所でも会計士資格取得のための実務要件は満たせるでしょう(要確認のこと)。
年齢リミットについては、
しばしば「未経験は40歳まで」などと言われますが、すべての事務所が一律に線引きをしているわけではありません。
むしろ年齢よりも人柄や代表者との相性によって決まってくることが多いようです(とにかく中小個人は人的なつながりを大事にしますので)。
ですので、収入面を含む条件面や勤務地を選ばなければ、全くのゼロということは基本的にないはずです。
中小監査法人では、大手監査法人よりもパートナーになりやすいところがあったり、
個人事務所では、独立のための実務を学ぶ機会があると思います。
大手監査法人のような華やかさ(?)はありませんが、中小個人の良さ、そして居心地の良さがあるものです。
公認会計士の独立にも年齢の壁ってあるの?
独立するのに年齢は関係はないが、事務所を軌道に乗せるには時間がかかる
まずは、この一言に尽きると思います。
注意すべきポイントとしては
- どの分野を中心に自分のビジネスをやっていくのか(税務なのか、コンサルなのか等々)
- 顧客を開拓するための人脈づくりはどうするのか
を早い段階から明確にしていきます。
監査以外での実務経験が必要だったり、顧客開拓に時間がかかるからです。
ゼロから事務所を立ち上げて軌道に乗せるまでの時間を考えると、やはり年齢的な要素は無視できなくなってきます。
結局、いつまでに公認会計士の勉強を始めるべきか
大手監査法人を目指すのであれば、早ければ早いほど良いでしょう。
というより、学生の内から勉強を開始すべきです(できれば在学中の合格を目指しましょう)。
先ほどの合格者調べでも、合格者の6割以上が20代前半です。
つまり多くの合格者が在学中か、卒後1~2年内に合格されるものと推測されます(大手監査法人への新規入所者も、この層が中心です)。
では、特に(大手)監査法人にこだわらない人はどうでしょうか(若い人ではあまりいないと思いますが)。
実はやはりこちらも早ければ早いほど良い、ということになります。
年齢がいくにつれ勉強が大変というのもありますが、仕事をしながらの勉強はさらにハードだからです。
確かに勉強に専念することも考えられますが、これはこれで人生の大きなリスクを抱えることになります。
もっとも、試験に合格すれば、道はとりあえず開かれますので、絶対に○○歳までに始めなければいけない、ということはありません。
ここが士業資格の強みであり、サラリーマンと違うところです。
特に独立することを決めている人は基本的に何歳でもOKとなります。
ただし、その場合でも実務を経験するために、どこかに一度は就職することが必要です。
ですので、最終的な結論としては
思い立ったら至急始めるのがベストです!
\ 資料請求は無料でとっても簡単! /
最後に
公認会計士の受験や就職を中心に解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
一般的に言えば、35歳を過ぎると勉強も仕事も色々と制約がでてくるものです。
人生には限りがあるし、会計士といえども社会という相手があっての職業ですから。
ですが一律に年齢で決まってしまうかというと、実情は少し違います。
制約がある中でも、チャンスは与えてくれる、それが公認会計士の最大の強みです。
なので、会計士になって活躍したいと思う人には、年齢にばかりこだわらないで、ぜひ挑戦していただきたいと思います。