公認会計士のバイトが注目を集めています。
その背景には、激務から解放されたい、独立が軌道に乗るまで収入を得たい、等さまざまな事情があったりします。
他方で、これらの働き方を巡っては不安要素も付いて回るもの。
例えば
- 会計士のバイト時給ってどれくらい?
- バイトは負担が軽い分、不安定なのが心配
- メリットやデメリット、注意すべき点とは?
- バイトの求人はどのように探したらよいの?
など。
どれももっともと言えるでしょう。
そこでこの記事では、監査のパートを中心に、公認会計士のバイトについて徹底解説していきます。
併せて求人の探し方についても言及していますので、ぜひ参考にしてみてください。
・実務経験、通算20年以上
・独立までに大・中・小の3つの事務所に勤務(他に特許事務所経験あり)
・資格:公認会計士・税理士・弁理士
・独立後は会計・特許事務所を運営
・会計士のバイトは独立後も含めて通算10年以上
公認会計士のバイトとは
まずは結論としては
公認会計士のバイト≒監査法人のバイト(パート勤務)
と考えていただいて構いません。
ただし厳密に言えば、監査法人のパート以外にも
- 専門学校でのアルバイト(講師業など)
- 会計事務所でのアルバイト
などもあります。
ただし、専門学校の講師業のアルバイトは数が少ないうえ、どちらかというと公認会計士というより試験合格者向けと言えます(その場合は非常勤ではなく常勤が一般的です)。
また、会計事務所での非常勤も件数が少なく、あったとしても単純な記帳入力などが中心です(時給単価の多くが@1,000円余りと安く、会計士の時給に見合いません)。
よって以下では、監査法人でのバイト(パート勤務)を前提に解説していきます。
これが公認会計士のバイト時給です!【給与明細も公開】
まずは論より証拠です。
筆者が監査法人でバイトをしていた時の給与明細が残っていたので、これを公開します。
今時、このような手書きの給与明細は殆ど見ないと思いますが、筆者がバイトしていた中小監査法人ではこれを渡していました。
少々わかりづらいので、明細の内容と勤務形態を整理しておきます。
- この事務所では日当ベースで支給・1日当たり60,000円
- 当月は6日勤務で、6日×@60,000=360,000円
- 就業時間帯は10時AM~5時PMで、実働6時間(残業は一切なし)
- 結果、時給ベースで10,000円!(ただし出張費を除き交通費込み)
- 雇用契約のため報酬ではなく、給与扱い(「乙欄」適用により手取りは292,000円)
明細書のショボさとは裏腹にその内容は…です。
筆者は、自分を特段「できる会計士!」とも思っていなかったのですが、なぜか、これが提示された金額でした。
チョットだけ注意したいのは(今日の一般的な非常勤と異なり)雇用契約となっていたこと。
業務委託契約でもよいと言われたのですが、契約書を作るのが面倒だったのでこっちにしました。
あと、残業は決算期も含めて一切なかった一方、別件で審査を担当させられました。
もっとも、手当等は特に支給されないものの、年数日だったので負担はそれほどありませんでした。
筆者が会計士のバイトを経験してみた感想
筆者は会計士のバイト(監査のバイト)を結構長くやってきました。
結論から言えば、この会計士のバイトはとてもオススメということになります。
ご覧の通り、とにかく効率的に稼げますし、わずか1週間ほどの従事で平均的なサラリーマンの収入に到達してしまいます。
しかも筆者が現役の頃は、往査の度に寿司やウナギなどのリッチな昼食がクライアントから提供された。
今は状況が違うと思いますが、当時は接待を受けるのも半ば仕事だったのです。
他にも、人間関係を含めストレスが常勤と比べて遥かに少なく、やることやったら、あとは心身共にフリー!の気楽さが心地よかったものです(詳しくは後述)。
なお、監査以外のバイト(会計事務所の入力など)も少しやってみましたが、時給は監査の5分の1以下のうえ、ただ面倒臭いだけ。
正直、全くやる気がでませんでした(というより嫌でたまらなかった)。
監査法人でのバイトの時給相場について
上では筆者の例を紹介しましたが、実際には大手と中小では時給単価に多少の差異があります。
具体的には大手で時給5000円、中小で6000円以上が目安といったところ(参考:会計求人プラス・会計業界topics)。
そこで求人サイト等にて提示された時給を調べてみたところ(非常勤については「当社規定により優遇します」といった内容が多かったのですが)おおよその時給相場は見えてきました。それが次です。
- 7,000円~10,000円
- 5,000円
- 3,000円~6,250円
- (日当)50,000円~70,000円
- 6,500円
- (日当)35,000円~
- 6,000円~8,000円
- (日当)35,000円:10時~4時(実働5時間、時給換算で7,000円)
- (日当)40,000円:10時~5時(実働6時間、時給換算で6,666円)
注:下二つは筆者が上記のケース以外に経験した日当単価です。
一部(例外的に)対象として会計士試験合格者を思わせるものもありましたが、時給単価の範囲は、
5,000円~10,000円
でした。
会計事務所での入力のアルバイトなどと比べてみても5倍以上あるのがわかります。
やはり会計士の時給単価は破格です!
公認会計士のバイトのメリット
高単価で効率よく稼げる
最大のメリットは、上で述べた通り高単価で稼げることです。
特に中小法人では非常勤でも(計算上は)年収1,000万に届きます。
これは大手監査法人のマネジャークラスと言ってよいでしょう。
拘束される時間が少ない
業務委託契約が一般的ですので、拘束時間はあらかじめ決まってきます(例:10時から5時まで)。
決算期等の忙しい時期を除き、基本的に残業はありません。
決算期でも残業時間は長くて2時間ぐらいです。
中小法人を中心に、残業が殆どないところもあります。
また、常勤と異なり勤務日数も弾力的に決めることができます。
人間関係に悩まされることが少ない
完全にゼロということはないですが、非常勤の人間は、法人との関係では対等なパートナーとなります。
他のメンバーとのかかわりも、適度に距離を置きながらでOK。
どっぷりと(あるいはガチガチに)他者と関わらなくてよいのです。
また、仕事は現場作業が中心ですので、法人の行事への参加を求められたり、忠誠心を試されたり、などということはありません。
もちろん組織特有の社内政治などとも無縁になります。
公認会計士のバイトのデメリット
即戦力が求められる
業務委託契約に基づき対等な立場で仕事を任せられる以上、それなりに仕事ができなくてはなりません。
ですので通常、条件として、最低でも監査経験3年以上、できれば5年以上が求められます。
ただし中小法人によっては、この辺も結構、弾力的です。
大切なのは(修了考査までの3年間に)とにかく現場の仕事を一通りできるようになっていることです。
経済情勢により契約を切られる可能性もある
最大のデメリットです。
昨今では、経済情勢を含め何が起こるかわかりませんし、監査業界の過去を見ても楽観視ばかりしてられません。
一年更新の業務委託契約ですので、状況次第では今年で打ち切り、なんてこともあり得るのです。
また先々、現場作業のAI化が進んだ際には、現場スタッフの縮小・削減はあり得ない話ともいえないでしょう。
会計士協会の費用負担等について
会計士協会の会費(年間12万円)が自己負担となります。
また、これに加え、国民健康保険や社会保険料を自分で全て負担しなくてはなりません。
いざ、これらの納付書が送られてくると結構、愕然とするものです。
あと、懸念されるのが退職金がないこと。
老後の蓄えも含め、自分の責任で管理していく必要があります。
結局、高い時給の裏面として経済的なマイナス面があることはしっかり認識すべきと言えます。
公認会計士のバイトはこんな人におすすめ
- ゼロから独立する
- 育児や家事の時間や余裕が欲しい
- ワークライフバランスを重視する
ゼロから独立しようとする人
ゼロから事務所や事業を立ち上げるのは結構大変です。
顧客や仕事の開拓にも時間が相当かかりますし、収入も限られてくるので、生活の面でも厳しいでしょう。
そんな時こそ会計士のアルバイトは威力を発揮します。
育児や家事の時間が欲しい人
育児や家事は時間的にも精神的にもハードなもの。
特にフルタイムでの仕事との両立は相当キツイと言わざるを得ません。
そんな中で、仕事の時間や日数を弾力的に決められるは大変魅力的です(収入の良さまで含めると尚更です)。
こうした側面からも会計士のアルバイトは、女性だけでなく、男性にも注目される働き方と言えるでしょう。
ワークライフバランスを重視する人
今日の監査業務は一般的に激務です。
3年、5年とやるにつれ、心身共に疲弊してしまう人も少なくありません。
他方、今日、脚光を浴びているのがワークライフバランスの考え方。
ですので、疲れた時こそ会計士資格を上手く活用したいものです。
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監査法人のバイトで注意すべきこと
大手監査法人の非常勤の求人は減少傾向にあります。
また報酬単価も相対的に低いうえ、間接業務も含め残業を伴うこともあるでしょう。
ですので、監査の非常勤といえば、中小監査法人がオススメです。
ただし、その中小監査法人の非常勤にも色々と特徴や事情があります。
そこで、先に述べたデメリットとは別に注意すべき点を指摘しておきます。
- 主査や審査などの現場以外の作業を求められることがある
- 監査の品質管理やクライアントの状況によっては不安要素を抱える
- 仕事の進め方につき、大手とのギャップに戸惑うかも
- 監査のバイトが、かえって独立開業の足かせになるおそれアリ
現場以外の仕事を求められることがある
特に事務所の構成員が非常勤だけで構成されている場合は注意が必要です。
雇用契約となる時も同様です。
大手の非常勤では基本的にありませんが、中小では現場以外に様々な間接作業や主査、審査をやらされることがあります。
その際も、残業代の有無について事務所によっては曖昧だったりします(もともとの報酬単価が高いこともあり残業代は込々なんてことも)。
冒頭で述べた通り、私のケースでは(現場作業以外にサービスで)審査をやらされました。
ですので、残業の有無や現場以外の作業の有無も含め、必ず条件として事前に確認しておくことをオススメします(後述する転職エージェントを活用するとスムーズにいくと思います)。
監査の品質管理は大丈夫?
また、以上とは別に、監査の品質管理の問題があります。
中小事務所によっては人員や時間が十分に取れないため、マニュアルをはじめとする管理体制が整ってなかったりします(特に法人メンバーが非常勤ばかりだと、その辺も含め責任が曖昧になりやすい)。
今日では、だいぶ整備され落ち着いてきましたが、金融庁の検査等に十分対応しきれていないところがあるかもしれません。
こうなると、最悪、業務停止命令をくらうような事態も…
要するに、クライアントの異動も含め相対的に不安定なのです。
大手監査法人とのギャップ
あと付け加えておきたいのが中小法人特有の仕事の進め方について。
ガチガチにマニュアル化しておらず、弾力的かつ自主的に仕事ができるところが多いと思います。
融通が利いて、やりやすい反面、上記の通り、品質管理上問題があったりします。
大手にてキッチリ仕事をされてきた方からすると、戸惑うかもしれません。
「こんなんで大丈夫か…」と。
筆者が昔、非常勤で出入りしていた某中小法人のことです。
ある年度に、大手出身の若手CPAが数人加わったのですが、業務全般の酷さに「コレって監査の仕事とは言わないよ!」と吐き捨てていました。
翌年、ナント日当10万円近くを提示されたようですが、(筆者も含め)皆、去っていきました。
かえって独立開業の足かせになるおそれ
監査のバイトが効率よく稼げることは先に述べた通りですが、独立開業者を中心にかえってこれが足かせになることがあります。
本来は(事務所を軌道に乗せるまでの)生活費等を賄う臨時の手段であるはずが、安易に高収入を得られてしまうため、これにどっぷり依存してしまうのです。
結果、営業活動等に身が入らなくなり、自分の事業のメインが監査のバイト、などといった本末転倒な事態になりかねません。
今日、独立開業するには大変な労力が要りますが、その辺りが骨抜きにされてしまうリスクがあるということです。
公認会計士のバイトの探し方
知人のコネクションを通じて紹介を受ける
- 知人だからといって、監査法人とのコネクションがあるとは限らない
- 断りづらく、しかも仕事に就いてから気苦労があるかも
まず考えられるのが、勤務していた監査法人や補修所を通じての知人のつて。
ただし、彼らが必ずしも監査法人とのコネクションを有するとはいえないでしょう。
もしあったとしても、件数的に限られており、条件も含め折り合いがつくとは限りません。
しかも仮に話が進んだ場合は、断りづらいものです。
入所後も(知人が関わってきますので)なにかと気苦労が絶えなかったりして。
結果、人間関係を含め、かえってストレスが大きくなってしまった、なんてこともあり得ます。
ちなみに筆者自身の事務所では、縁故等での入所は全てお断りしてきました。
仕事上の利害で私的な人間関係を壊したくなかったからです。
公認会計士協会の求人情報サイトをチェック
- 件数が限られており少なめ
- 報酬単価について比較的低い案件が多い
日本公認会計士協会が運営するJICPA Career Naviは、会計士試験に合格すれば誰でも登録できます。
手ごろなうえ仲介者もおらず、スピーディーに決まるのがいいですが、上記の注意点もあります。
なので、転職エージェントのような第三者を介すのが面倒という人や、エージェントが合わないという人は活用すると良いでしょう。
時間があまりないという人も検討してみるとよいと思います。
とりあえずチェックしておいて損はないはずです。
転職エージェント・サイトの活用
結論的には転職エージェントの活用が最もオススメということになります。
件数も多く、条件をきめ細かく設定できます。
また、通常、アドバイザー(担当者)がつきますので、上で述べた注意点について確認してみることをオススメします。
ここでは特に会計士の転職に強いエージェントを紹介しておきます。
マイナビ会計士 | MS-Japan | レックスアドバイザーズ | ジャスネットキャリア | |
得意分野 | 公認会計士 | 管理部門 士業 | 公認会計士 税理士 | 公認会計士 税理士 |
主な年齢層 | 20代・30代 | 20代~50代 | 20代~40代 | 20代・30代 |
設立(歴史) | 1973年 | 1990年 | 2002年 | 1996年 |
迷ったらマイナビ会計士がオススメです。
会計士業界の転職に精通したエージェントで、会計士向けの求人数が非公開も含めて豊富です。
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なお、年齢が高めの方はMS-Japanもぜひご検討を。
対象年齢層が広く、併用すべきエージェントとしても見逃せません。
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【Q&A】会計士のバイトに関してよくある質問
注:個々の事項については事務所の就労規則等によって変わってきますので、必ず事前に事務所(もしくは転職エージェント)に確認してみてください。
また、もしかしたら今日でも曖昧なところがあるかもしれませんが、そうした事務所は避けた方が無難でしょう。
最後に
公認会計士のバイトについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
確かに、会計士のバイトは単価が高く融通も利くため、悪い言い方をすれば”楽して稼げる”といえなくもありません。
他方(良し悪しは別として)オイシイ部分ばかりかというと、残念ながら実情は違います。
なにより先々のことも含め不安要素が払拭できません。
ですので、バイトの表と裏をしっかり認識したうえで、自分に合った会計士ライフを実現してみてください。
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