弁理士試験が難関である理由の一つに、その受験者層のレベルの高さが挙げられます。
他の士業と比べても、競争の母集団のレベルが違うのです。
結果として弁理士業は学歴に大きく左右されるのではないか、とも思われがちです。
中には気後れしてしまう人もいるかもしれません。
そこでこの記事では
- 弁理士試験
- 就職
- 仕事に就いてから
に分けて弁理士と学歴の関係について解説していきます。
結論として基本的に学歴は決して案ずるものではないことがわかると思います。
ちなみに筆者は国立大学に合格できなかったため、私立大学を卒業しています。
主な経歴:
特許事務所→公認会計士・監査法人→特許業界復帰→弁理士→独立(特許事務所・会計事務所経営)
特許事務所を営む父親の長男に生まれる。
その関係もあって学生の頃から特許業務に従事。
ところがある日、急にビジネスの広い世界を知りたくなり、会計士業界に飛び込む。
父親の健康事情及び自身の適性を考慮して特許業界に復帰、その後、事務所を承継。
弁理士と学歴の関係①:学歴が高い方が試験は有利?
まずは弁理士試験統計から令和5年の合格者上位校を見てみます(合格者数の上位4校です)。
出身校別内訳 | 合格者数 | 志願者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
東京大学 | 22 | 154 | 14.3% |
京都大学 | 14 | 166 | 8.4% |
早稲田大学 | 11 | 133 | 8.3% |
慶應義塾大学 | 11 | 104 | 10.6% |
全体 | 188 | 3,417 | 5.5% |
出典:令和5年度弁理士試験統計(注:合格率は志願者数を分母にして筆者が独自算定)
見事に我が国トップ校が名を連ねています。
しかも東大、京大を中心に、この辺りは例年殆ど同じと言ってよいでしょう。
ですが、決して学歴が高いから弁理士試験に受かりやすいのではありません。
そうではなく、
正しい受験勉強の方法を学生の頃から身につけているので、学歴も結果的に付いてくるのです。
特に弁理士は仕事をしながらの受験となるので、勉強時間の確保や勉強の要領も問われてきます。
さらに言うと、
弁理士は理系が中心ですが、その上位校出身者の多くは大学院修士までが一般的であり、これを通じて論文試験の選択科目が免除となります。
以上のことから、弁理士に合格するためには、次のことがポイントとなってきます。
- 正しい勉強法をとること
- 勉強時間をいかに確保するか
- 選択科目をいかに攻略するか
つまり、正しいやり方で効率的に勉強することができれば、合格できるということです。
また、論文選択科目にしても(多少負担が増えますが)適切に勉強すれば十分突破できますし、他資格等を取ることで免除を狙うこともできます(例えば行政書士や情報処理技術者など)。
なお、東大京大出身者には受験秀才が多いのは確かですが、
決して東大京大が弁理士の合格者数を独占しているわけではありません。
むしろ彼らの大部分が不合格になっていることもまた事実です(東大でも10人中、約9人は不合格です)。
他方で、トップ校以外でもしっかりと合格者はコンスタントにでています。
弁理士と学歴の関係②:学歴は就職に影響するのか
- クライアント側の関心事もあるので、全く影響がないわけではない
- それでも基本的には学歴よりも実績や経歴が重要
結論としては、学歴の影響の度合いは、就職先(特許事務所や企業)による、ということになります。
いずれにしても、全く皆無ということはないでしょう。
例えば(企業に比べて)応募者数が少ない特許事務所では、それほど学歴は影響しないと考えられますが、
それでも、学歴が就職に全く影響しないとは言い切れないのです。
所長自身が気にする事務所もありますし、クライアントとの信頼関係上、考慮せざるを得ない側面もあるからです。
ですが、学歴はほんの一面的なことに過ぎません。
新卒者を除き、重視されるのは何と言っても実績と経歴です。
また、高い英語力などの技能があれば当然有利に働いてくるでしょう。
クライアントにしても、担当者の専門分野や得意分野、そして研究開発等の実績に強い関心を示してきます。
明細書作成の経験があれば、その質を問うてくるはずです。
他方、企業は応募者数の関係で1次選考(書類選考)を行う必要がでてきます。
そこで学歴が書面審査上、影響してくることはあり得ます。
もっとも、未経験者ならポテンシャルとして年齢(若さ)を、経験者なら上と同様、実績や経歴が重視されるでしょう。
さらには書類上でのアピールの仕方などによっても変わってくるはずです。
結果として(ゼロではないものの)学歴自体の影響は小さくなってくるのではないでしょうか。
弁理士と学歴の関係③:仕事に就いてからは実力がすべて!
- 実務能力(明細書作成能力)は学歴とは関係なし
- 成功している所長弁理士達にしても一流大学卒ばかりではない
実務に就いてからは明細書の質と仕事のスピードで評価されます。
学歴が介入することはあり得ません。
むしろ、学歴が高いと、かえって厳しく評価されるかもしれません。
「学歴だけで使えないヤツ!」とか「お勉強しかできない無能な人間」みたいな感じです。
逆に、学歴に関わらず(さらに言うと弁理士資格の有無にかかわらず)有能な人は明細書の質などで頭角を現すものです。
クライアントから盛んに指名がかかり、引っ張りだこになるのです(有資格者が差し置かれることすらあり得る)。
事実、私大卒の特許技術者の中には、新人や若手の教育・指導で事務所に貢献したため、(無資格でも)担当部長まで上り詰めた人もいます(後述の個別ケース参照)。
実は、こうした能力以外にもう一つ求められるものがあります。
いわゆるマネージメント力です。
本来の弁理士業務からは離れますが、弁理士もビジネスマンである以上軽視できません。
特に事務所で幹部を目指したり、独立しようとする人は必須です。
ある程度の規模の事務所になると、明細書作成実務と並んで、企業同様、管理職としての仕事が増えてくるからです。
しかもここまでくると、さらに学歴のカラーは希薄になってきます。
成功している事務所の所長弁理士の学歴を見れば一目瞭然です。
事務所メンバーのプロフィールをHPなどで見ればわかりますが、旧帝卒の所長弁理士は少数派です。
むしろ地方国立や私立大学卒(しかも文系出身)だったりするのです。
彼らは、東大京大卒の優秀なスタッフを見事使いこなしています(マネージメントに成功している)。
弁理士でガンガン稼ぎたいと思っている人はぜひ覚えておくとよいでしょう。
ハッキリ言って、学歴に拘っている場合ではありません!
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弁理士と学歴の具体的なケース
ここでは筆者の知っている個別具体的なケースを紹介してみます。
ケース1:私立大工学部卒のNさん:
特に目立つ存在ではなかったですが(大学も普通の私大です)、実務も人並みにこなしたうえ、わずか2年ほどで弁理士試験に合格。
その後直ちに独立して、あっという間に事務所を軌道に乗せていきました。
とにかく経営能力や営業能力に長けていました。
ちなみに大のゴルフ好きだったような気が
ケース2:旧帝大工学部卒のKさん:
やはり旧帝だけあって優秀なうえ、明細書も素晴らしく、この方も弁理士試験に早期合格。
事務所勤務の後は大手メーカーの知財部で経験を積み、地元で独立されました。
ただし、上のNさんと異なり、いわゆる学者タイプ的なところがあるせいか、事務所はマイペースで運営されていたようです。
ケース3:私立大工学部卒のSさん:
とても地味な人で、大学卒業してから特許事務所一本でやっていきました。
とにかく明細書の質ではトップクラスで、常に様々なクライアントから指名がかかっていました。
新人の指導にも定評があり、事務所の幹部にまで上り詰めるほど。
弁理士資格を取得するまでは至りませんでしたが、クライアントからは一般的な弁理士よりも高い評価を受けていました。
ケース4:私立大工学部(夜間)卒のYさん:
苦学しながら大学を卒業した後、特許庁審査官として特許審査に従事。
最終的には自宅開業されましたが、役所出身ということもあって、クライアントからの信頼は厚かったと思います。
もちろん堅実に仕事をこなしていましたし、とにかく明細書を書くのが好きな方でした。
🍀総評:
筆者の経験からみても、(東大京大などの)トップ校出身者ばかりが活躍しているという印象は殆どありません。
むしろ、東大京大などの旧帝大理系は、どちらかというと学者(研究者)タイプの方が多かったように思います。
とても優秀なのですが、野心的にバリバリ仕事をこなす人とは一線を画するようにも感じます。
もちろん人それぞれですが、特に事務所のマネージメントまで含めますと、弁理士での成功と学歴との因果関係は、なかなか見出しづらいというのが正直なところです。
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まとめ
弁理士と学歴の関係について解説してきました。
まとめますと次の通りです。
- 学歴は基本的に関係ない
- 弁理士試験には正しい勉強法で臨めばOK
- 就職・転職では実績や経歴が重要
- 仕事に就いてからは実力勝負
以上ですので、
弁理士を目指そうと思っている人は、学歴についてはこのくらいにして、前向きに取り組んでいってもらいたいと思います。
受験生につきましては、一日でも早い合格を願っています。
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