税理士は何歳まで目指せるか?仕事や資格取得に年齢の限界はある?

沈む夕日。時間的年齢的な限界を表している。

税理士は年齢を問わず挑戦できる超優良資格です。
実際に、幅広い年齢層がチャレンジし、また業界入りを果たしています。
「我こそは」と思う人もいるでしょう。

ですが、決して甘くはない、厳しい現実が税理士への挑戦にはつきものです。
特に就業(仕事)と資格取得のハードルの高さは、年齢に応じて異なってくるのが実情です。

そこでこの記事では、「税理士は何歳まで目指せるか」と題して、これらの限界に迫ってみたいと思います。
併せて、年齢のハードルを下げるための具体的対策も解説していますで、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の執筆者

・実務経験、通算20年以上
・独立までに大・中・小の3つの事務所に勤務(他に特許事務所経験あり)
・資格:税理士・公認会計士・弁理士
・独立後は会計・特許事務所を運営

目次

税理士の年齢の実情

59.89歳

税理士の平均年齢です(注:数値は以下の表に基づき、各年代の中間値を加重平均しています)。

ほぼ還暦ということで、業界の高齢化が進んでいるのがわかります。

また、具体的な年齢別の構成は次の通りです(「日本税理士連合会、第6回税理士実態調査」を基に作成)。

年齢層人数割合
20代187人0.6%
30代3,358人10.3%
40代5,599人17.1%
50代5,817人17.8%
60代9,868人30.1%
70代4,343人13.3%
80代3,421人10.4%
平成26年1月1日現在 32,747人対象

60代の割合が最も多く、3割を超えています(80代も1割以上!)。

税理士の過半数以上が還暦を超えているのです。

ちなみに、税務署を定年退官した方の多くが税理士登録をしていきます。
筆者が税理士会に入会した際の新人向け研修会でも、過半数以上の方が役所OBでした(それこそ、〇人ホームの入所式みたいな感じ)。

税理士を目指す際の年齢的ハードルとは

上で述べた通り、税理士の平均年齢は約60歳です。

この数字だけ見ると、税理士への挑戦はハードルが低いのでは、と思う人もいるかもしれません。

ですが、実際には資格取得(国家試験合格)と会計事務所等への就業といったハードルが待ち構えています(注:税理士資格の取得には試験合格のほか、2年以上の実務経験が必要です)。

どちらのハードルも、年齢によってその高さが変わってきます。

税理士試験と年齢

税理士試験の合格状況

まず税理士試験の合格状況を見てみます(出典:国税庁HP「令和5年度(第73回)税理士試験結果表」)。

合格率は、年齢が高くなるにつれて下がっています(41歳以上は13.1%まで下がります)。
つまり、年齢とともに試験合格のハードルは高くなるということです。

科目合格制のワナ

次は科目ごとの合格状況です(出典:国税庁HP「令和5年度(第73回)税理士試験結果表」)。

税理士試験は、科目合格制(しかも一度合格した科目は永久有効)を採用していますが、
どの科目も合格率は大体10~15%ぐらいで推移しています(例年、簿記と財表は15~20%とやや高めですが、特に令和5年度は財表が30%近くまで上昇しました)。

ここで注意したいことがあります。

しばしば「税理士試験は1科目ずつ取ればよい」という言葉を耳にします。
確かにその通りなのですが、このことで「税理士試験は受かりやすい」と捉えるのは危険です!

主な理由は次の通り。

  • 年1回の試験において各科目すべてで合格率10%というのはかなり過酷である
  • 仕事をしながらの受験勉強はこれまた大変
  • 具体的な勉強(計算練習と理論暗記)がキツイし、無味乾燥
  • 長丁場になりやすいく、集中力やモチベーションを保ちづらい

結果として、「3科目合格で止まってしまっている」「法人税法だけ10年近くやっているが受からない」などといった人が少なくありません。
結局、資格取得は諦めた、という人も周囲には大勢存在します。

他にも、実務をやっているうちに受験勉強が馬鹿らしくなり、やる気が無くなった、という人も。

筆者は公認会計士試験及び弁理士試験を経ていますが、試験の負担についていえば(世間で言われていることと真逆ですが)、
”税理士試験>弁理士試験公認会計士試験”
というのが正直な感想です(会計士の短答は年2回あるし、論文の学生の合格率は約50%!)。
ちなみに、会計士試験にも税法科目(「租税法」)がありますが、合格に必要なレベルは・・・とても口には出せません。

年齢が高いと試験合格のハードルは高くなる

特に税理士では計算と理論(法令等の暗記など)が問われます。

そこで年齢別のハードルを見てみると次のような感じになるでしょうか。

年齢計算理論(暗記)
20代無問題無問題
30代無問題ほぼ無問題
40代ほぼ無問題個人差がでてくる
50代以降個人差がでてくるかなりキツイ

ザックリですが、計算は(無味乾燥でキツイものの)まぁなんとかなるかな、というのが感想です。

むしろ大変なのは、理論であり、条文等の法令暗記です。

早ければ40代で厳しくなってくるかもしれません。個人差が出るとともに、各人の工夫が求められると言えます。

特に40代以降は仕事がハードになってきますので、勉強の方にどれだけ労力を回せるか、もポイントです。

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税理士の転職と年齢~経験者と未経験者は事情が異なる~

一般的には、資格取得も転職も年齢が高くなるにつれて不利になってきますが、
特に転職については、業界経験の有無によって事情が異なってきます。

他方、試験勉強については、実務によって大きな影響を受けることはないでしょう。
むしろ、合格のためには、実務と受験勉強は別物と割り切った方がよいと思われます(ただし知識自体は仕事で結構、役に立ちます)。

この点につき、以下の表にまとめておきます(注:ひとつの目安とお考え下さい)。

スクロールできます
経験の有無具体例年齢の制約
業界経験あり会計事務所・企業経理財務基本的になし(注)
業界未経験(企業等のでマネージメント経験あり)営業等で管理職40代まで
業界未経験(企業等でのマネージメント経験無し)教師・調理師・医療従事者30代前半まで
正規の就業自体が一切無し無職・アルバイト20代まで
(注)50代以降は多少制約がでてくるが、十分可能性アリ

注意したいのは、40代以降は、実務と並んでマネージメントつまり管理職としての経験も重視されるということです。

🍀20代

転職市場では基本的に問題ありません。
税理士業界において20代という年代自体が希少です。

さらに、AIやIT技術に精通していると、さらに有利です(士業はアナログ人間が多く、ITやテクノロジーに疎い)。

🍀30代

ポテンシャルで採用される限界です。

特に企業等でのマネージメント経験がないとなると、30代前半までが一つの区切りとなります(この経験の有無は重要です)。

🍀40代

ズバリ職歴が問われてきます。
しかも一般的には実務以外にもマネージメント能力も期待されます。

ただし、マネージメント経験がなくても、高度な専門分野での実務経験・能力がしっかりアピールできれば、税理士の場合はOKです。

🍀50代以降

実務にせよマネージメントにせよ職歴があれば、十分、転職は可能であると思われます。

ただし、そうでなければ、税理士への転身は大幅な年収ダウンを覚悟しなくてはなりません(40代も同様)。

🍀総評

大きく分けて、40歳が一つの節目と言えるでしょう。

それ以降の年代は、少なくとも何のために税理士を目指すのか、税理士になってどういう仕事をしたいのか、が明確になっていることが大切です。

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収入と勉強の成果は相反する?

上でも触れましたが、仕事と(合格のための)勉強は別ものです。
しかも、そこでは、ある種のジレンマが存在します。

それは、仕事と資格取得(勉強)のどちらにウエートを置くか。
そのバランスを取ることが、税理士を目指す際の難しいところです。

要するに、仕事がハードになれば(極端に言えば)自分の勉強どころではない、なんて状況にもなりかねないのです。

他方で、例えば会計事務所での未経験者向けの仕事は、年収は低いものの、勉強時間は比較的確保しやすく、勉強と両立しやすいでしょう。

こうした仕事と勉強のバランスが、収入の関係もあって、年齢が上がるにつれて難しくなるのです。

筆者も、40代以上の未経験者を雇用したことはありませんし、なにより年収などの条件面で合わなくなってしまうのです。

税理士の独立にも年齢の限界ってあるの?

独立に年齢制限は一切ありません。

ですが、事実上、年齢的な制約はついて回ります。

独立する前に実務経験が必要

税理士資格を取得するには、上で述べた通り、2年以上の実務経験が必要です。

また、実務は試験勉強とは別物です。税務上の判断などは試験勉強では学べないのです。

他にも、会計ソフトや税務ソフトの扱いのほか、細かい事務作業が色々とついて回ります。

資格取得のための要件と同様、2年以上は実務を経験する必要があります。

年齢とともにでてくる現実的な問題とは

40代くらいまではあまり気になりませんが、40過ぎると色々と気になることがでてきます。
いくつか例を挙げると

  • 物忘れや事務作業・計算ミス
  • 健康状態
  • フットワーク(行動力)が鈍くなる

例えば、ミスの中でも、税務署への書類提出を失念していた、などは致命的です(期限徒過も同様です)。
計算事務にしても、本来なら1円たりとも間違えてはいけません。

また、健康管理も同じくらい懸念材料になり得ます。
突然の入院などで、業務の遂行ができなくなると、顧客の不利や損害につながってしまいます。

言い換えれば、「本人のやる気次第」では済まないのです。

年齢のハードルを下げる具体的な対策

  • 大学院で税法2科目の免除を狙う
  • 実績に結びつく転職をする
  • 状況によっては年収ダウンも覚悟する
  • 受験予備校は通学ではなくWebなどの通信を利用する
  • 転職エージェントを活用する

大学院で税法2科目の免除を狙う

5科目合格は、結構大変で、途中で挫折してしまうリスクを完全には排除できません。

そこで大学院で税法2科目の免除を狙っていきます。
本来なら、法人税法もしくは所得税法のどちらかを受けなければならないのですが、このルートでクリアしていきます。

2年という時間とコストがかかりますが、5科目合格を狙うより資格取得に近づけます(注:学費は修了までの2年間で150万~200万円が一般的です)。

とにかく絶対資格を取りたい人には、ほぼ必須と言ってよいでしょう(会計事務所2世でもよく利用されるルートです)。

ちなみに、先に挙げた、会計士試験及び弁理士試験との難易度の比較ですが、税法2科目免除することで
”弁理士試験>会計士試験>>税理士試験
へと筆者の評価は変わります!

過去の実績に結びつく転職をする

これは40代以上の方や収入アップを狙いたい方にとって大切な内容となってきます。

逆に、過去の実績とは無関係に転職を狙うとすると、次のような年収ダウンも必要になってきます。

状況によっては年収ダウンも覚悟する

年齢が高くなるにつれて、いろいろと不利になることはおわかりいただけると思います。

そんな不利な状況で転職を実現するには、年収を中心に求職者側の希望や条件を緩めるしかありません。

他方で、上で述べたように、年齢が行くにつれて年収ダウンは厳しいもの。

結局、何のために税理士を目指すのか、という各自の目的意識、さらには人生観・職業観などに行き着きます。

その結果、税理士への転職ではなく、今の職場で頑張っていこう、という選択肢もでてくるでしょう。

予備校は通信を利用する

税理士を目指す人の多くが、仕事をしながらの受験勉強となります。

確かに受験に専念することも考えられますが、工夫することで十分、仕事と勉強の両立は可能です。

そこで大いに役に立つのが、Web等を活用した通信講座。
しかも通学よりも経済的にお得なものが少なくありません。

ぜひ、スキマ時間をフルに有効活用しながら、かつ効率的に合格を果たしたいものです。

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転職エージェントを活用する

今日は、税理士業界に精通した転職エージェントが充実しています。

情報収集の段階から、個々のカウンセリング(履歴書の書き方や面接対策を含む)まで、エージェントの活用は事実上、必要不可欠と言ってよいでしょう。

ここでは、税理士・会計事務所に強いエージェントを紹介しておきます。
※各エージェントのプロモーションを含みます。

スクロールできます
ヒュープロMS-Japanマイナビ税理士
設立201519901973
得意分野会計事務所
税理士法人
士業全般
管理部門
税理士
科目別合格者
特徴圧倒的な求人数管理部門を広く扱う非公開求人数が多い
主な年齢層25~50歳20~50代20代・30代
※各エージェントのプロモーションを含みます。

上記のうちで迷ったら、ヒュープロがオススメです。

比較的新しいエージェントですが、求人数が豊富なうえ(全国9,000件以上)、税理士事務所への転職サポートでは特に強みを発揮しています。

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なお、他社についても優良エージェントなので、併せてのご利用も一考です。

税理士を目指す具体的なルート

20代・30代向け

事務所就職・勉強開始➡簿記・財務諸表論・消費税法合格➡残り税法2科目合格

まずは簿記・財務諸表論の勉強から始めてください(全ての受験生に共通です)。
また、税法科目は法人税法と所得税法の両方を取らないこと。たとえ若くても過酷過ぎるし、合格が遠のくかもしれません。

40代・50代向け

事務所就職・勉強開始➡簿記・財務諸表論(できれば消費税法も)合格➡大学院で税法2科目免除

就職の際は大学院(夜学)に通えるか確認しましょう。
あるいは通信制の利用も一考です(次も同じ)。

働きながらの合格に自信のない場合

1年間、受験勉強に専念(簿記・財務諸表論・消費税法合格)➡事務所就職・大学院で税法2科目免除

なお、20代前半のうちに集中して先に資格を取得してしまうのも、もちろんOKです(ただし自身の適性を十分見極めること)。

最後に~とにかく早ければ早いほどよい~

税理士は何歳まで目指せるか、について解説してきました。

結論としては、勉強でも仕事でも始めるのは早ければ早いほど良い、ということです。

そうした中、若い人で関心を持たれた方は、1年間死に物狂いで勉強してみるのもアリでしょう。
税理士の勉強内容は決して無駄にはなりませんので。

対して、特に40代以上の方は、迷っているなら、慎重にした方がよい、ということになります。
逆に、決断したのなら、即刻実行に移すべきです。

いずれにせよ、時間が命綱ともいえるのが税理士への挑戦です。

ぜひご自身に合った決断をしていただきたいと思います。

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